2023.07.25 11:15

アムステルダム、クルーズ船の寄港禁止に オーバーツーリズムや環境対策で

アムステルダムがクルーズ船の寄港禁止に踏み切った理由はこうしたオーバーツーリズム問題のほかに、環境への懸念もある。欧州の環境団体「トランスポート&エンバイロメント(T&E)」は6月に公表したレポートで、米カーニバルが所有するクルーズ船63隻による2022年の硫黄酸化物排出量は、欧州で使われている自動車2億9100万台の排出量よりも43%多かったと指摘している。

ニューヨーク・タイムズによると、オランダのリベラル派政党でアムステルダム市議会で多数派グループをつくる「民主66(D66)アムステルダム」の幹部、イラーナ・ローデアクラークは「アムステルダムはクルーズ船が来ないほうが快調に進める」と述べている。

アムステルダム周辺では、市から東へ30キロメートルほど離れたエイマイデンにも港があるが、こちらは禁止の影響を受けない。

ベネチアやバルセロナも

「クルーズ船お断り」を打ち出したのはアムステルダムが初めてではない。これまでに、スペインのバルセロナやイタリアのベネチア、アイルランドのダブリン、ギリシャのサントリーニ島、フランス領ポリネシアなども、環境面への懸念やオーバーツーリズム対策でクルーズ船の寄港を制限したり禁止したりしている。

ビジネスニュースサイトのインサイダーによると、米国でもフロリダやメーン、アラスカ、カリフォルニアといった州の港湾都市が同様の理由でクルーズ船を規制しようとしているが、船の停泊地や桟橋は連邦政府が所有している場合が大半なため、思うように進んでいないという。

環境活動家の団体はクルーズ船による環境破壊や劣悪な労働慣行、地元の文化に与える影響への配慮の欠如を批判し、全面的な廃止を呼びかけている。クルーズ船業界は、コロナ禍中の運航停止で抱え込んだ多額の債務が重荷になっているほか、最近は旅行需要が高まるなかで人手不足にもあえいでいる。

一方、来年1月には、米ロイヤル・カリビアンが運航する世界最大のクルーズ船「アイコン・オブ・ザ・シーズ」が就航する予定となっている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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