経済・社会

2023.07.28 07:30

「闇バイト」に加担する心理 分業しまくり組織犯罪の実態

闇バイトに加担する心理とは?(shutterstock)

気軽な気持ちで加担 そして、逃げられなくなる

また別の詐欺事件では、消費者金融に80万円の借金があった被告人がTwitterで「闇バイト」と検索し、グループに接触。特殊詐欺の世界に足を踏み入れたという。“採用面接”のようなミーティングの際、免許証や実家の写真を送り、プライベートで使っていたスマホを没収された。こうして東京や大阪、京都などを舞台とした広域特殊詐欺グループで受け子や出し子をやっていた。分かっているだけで被害額は2000万円を超える。
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特殊詐欺の上位者は最初の面接の際、個人情報を送らせる。抜けたいと言い出した時、これらが脅しの材料になるからだ。被告人も実際「脅された」と証言していた。

徹底した分業制のためか、関わる人数の多さのためか、受け子や出し子の取り分は、多いとは決して言えない。例えばこの被告人の分け前は、奪った金の3パーセントのみだった。被害総額は2000万円であるから、取り分はトータルで60万円。直接被害者と接触するため、真っ先に逮捕される可能性が高いことは言うまでもない。

逮捕され、前科がつけばその後の人生において就職の際、極めて不利になる。マイナス要因しか見えない“仕事”だが、それでもTwitterでの「闇バイト」応募は後を絶たない。

「在宅ワーク」「ホワイトなお仕事」?

(Shutterstock)

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最近は「闇バイト」と分かりやすく明記していない“案件”もある。40代女性の被告人はまずTwitterで仕事を探すため「#在宅ワーク」タグで求人情報はないかとチェックしていた。借金や精神的な不調を抱えているなか、早く仕事を得たい思いがあったという。検索をすすめると〈ブラックな仕事ではなく、ホワイトなお仕事〉〈簡単な作業で日給1万円から3万円、全額日払い〉といった文言がプロフィールに記されたアカウントを見つけた。
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闇バイトのSNS広告では“ホワイト”というワードが用いられることもある。違法性のない仕事であると強調するためであろうが、本当に違法性がなければ“ホワイト”を強調する必要もないのであるから、“ブラック”であることが想像できる。

しかし、被告人はこの“ホワイト”を信じ、ダイレクトメッセージを送ってしまう。すると、誘導されたテレグラムから電話がかかってきたうえ「暗号資産の書類を自宅で受け取り、それをまた別の人に渡す」という仕事内容を説明された。これを信じた被告人は、自宅の住所と自分の氏名を相手に伝え、二度、荷物を受け取った。

実際は、荷物の中身は暗号資産ではなく、詐欺の被害者が騙されて送った現金だった。ホワイトなお仕事ではなく、詐欺の受け子だと分かったのは、その後、警察から連絡を受けたときだったという。

被告人はこの仕事を1件3万円で引き受けていた。荷物を受け取る時から、ホワイトなお仕事の発注者……つまり詐欺の指示役とはスマホで通話をしたままの状態となり、言われるがままに公園に出向き、荷物を見ず知らずの人間に渡した。

その際、報酬の入った封筒を受け取ったというが、封筒の中には、2万円しか入っていなかった。報酬は総額4万円。暗号資産の書類だと思い受け取った荷物の中にはそれぞれ、現金1400万円、400万円が入っていた。ホワイト案件であると指示役によって信じこまされ、受け子に加担したことになる。
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文=高橋ユキ 編集=督あかり

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