海外進出の鍵は「期待に応えること」
これまで顧客との「1対1のコミュニケーション」だったものを、今後デジタルの力を使って1対10、1対100へと拡大していきたいと村田は語る。「認知拡大と浸透のフェーズを慎重に進めてきたおかげで、ここ数年でHARUNOBUMURATAのブランドコンセプトを体現してくれるようなお客様に身につけてもらったり、ファッション誌で紹介してもらったり、成果も増えてきました。国内でもまだまだスケールの余地があるので、まずは日本のファンをもっと増やし固定化させたいです。その次に海外で積極的に展開したいですね」
世界で日本のブランドとして発信する上で、村田が意識していることがあるという。
「インド料理屋に行って、寿司を注文する人はいませんよね。カレーなどインドの伝統料理を期待して訪れます。ブランドづくりにも同じことが言えます」
海外の人に、日本ならではの素材や価値観に触れたいと思ってHARUNOBUMURATAを手に取ってほしい。そんな期待に応えられるブランドをつくるのが、海外進出の鍵だと村田は答える。
最後に、村田はファッションやブランドづくりを志す人へのメッセージを語った。
「日本には世界に自慢できる素晴らしいリソースが揃っています。だからこそ、 日本から世界で通用するファションデザイナーを目指すことも可能だと思っています。
そのためには、常に外に意識のベクトルを向けること。国内の市場だけでも十分ビジネスを成功させることができますが、世界に発信することで新しい市場と価値も見えてきます。世界進出したいと思ったら、自信を持って、ためらわず発信することが大事だと思います」
置かれた環境を客観的に観察する姿勢と、外へ向かう行動力を持つことで、隠れていた「自分が持つ価値」が引き出され、一段上のステージで戦えるようになる。世界の一流を経験し、新たなラグジュアリーを追求する村田の挑戦は続く。
村田晴信◎ARNO代表兼HARUNOBUMURATAクリエイティブディレクター。東京都出身。ESMOD JAPON TOKYO卒業後、渡伊。MARANGONI学院マスターコースを修了。2012年秋冬ミラノコレクション公式スケジュール上にて自身の名前を冠したデビューコレクションを発表。その後JOHN RICHMOND社、2015年よりJIL SANDER社レディースデザインチームに所属。2018年に帰国しラグジュアリーファッションレーベルHARUNOBUMURATAを始動。