英国政府は2016年の調査権限法(Investigatory Powers Act、IPA)の改正により、メッセージングサービスを提供する企業が個人情報のセキュリティ機能に変更を加える場合、そのリリース前に内務省の承認を得ることを義務づけようとしている。改正案はさらに、内務省に機能の停止を命じる権限を与え、企業は停止を求められた場合に、ただちにそれに従うよう求められる。
この規則は、エンド・ツー・エンドの暗号化について触れていないが、企業はメッセージの中に児童ポルノの素材が含まれていないかどうかの調査を受け入れることを義務付けられる。これは、ユーザーのプライバシーとセキュリティに対する深刻な懸念につながる。
アップルは英国政府に対し、この計画を非難する声明を提出した。「内務省が求める新たな権限の拡大は、革新的なセキュリティ技術をブロックし、英国および世界中のユーザーをより大きなリスクにさらす可能性がある」と同社はいう。「ほとんどの国が、言論の自由を個人の基本的権利として扱っていることを考えると、これは非常に問題だ」とアップルは述べている。
同社は、BBCの取材に対し、仮にこの計画が進めば、英国からメッセージングサービスを完全に撤退させる可能性があると述べている。英国政府がインターネットの監視を強化する中、他の多くの企業も、英国でのサービスを縮小または停止する可能性があると警告している。
WhatsAppとSignalも、メッセージングサービスの撤退をほのめかしており、ウィキペディアは、記事の検閲や年齢確認を強要されれば、英国から撤退すると述べている。
アップルはすでに英国のオンラインセーフティ法案への反対を明らかにしており、今回の脅しはその危機感を高めるものだ。英国には約2000万人のiPhoneユーザーがおり、同社のサービスは他の反対派の企業のものよりも注目度が高い。
英国政府は、この提案があくまでも検討段階のものであり、8週間の協議期間が終了するまで決定を下さないと述べている。政府は、恥を忍んでこの提案を撤回するか、国民の怒りに直面するかの選択を迫られる。
(forbes.com 原文)