ヘルスケア

2023.07.24 10:00

米ファイザー工場に竜巻直撃、ネットで陰謀論渦巻く

被害を受けたファイザーの工場は、実は新型コロナウイルスワクチンの倉庫だったと主張する者もいた。どうにかして新型コロナワクチンをシナリオに組み込みたい輩がいるのだ。たとえば、ツイッターのプロフィール欄に「ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストは私を陰謀論者と呼んでいる」と記しているエリン・エリザベスは、「速報:新型コロナワクチンを保管していたファイザーの倉庫がノースカロライナ州ロッキーマウンテンの竜巻で破壊された」と投稿した

だが、この主張には何の根拠も添えられていなかった。エリザベスは、NGO団体デジタルヘイト対策センター(CCDH)が「偽情報の12人」と呼ぶオンライン反ワクチン論者の代表格の一人である。米誌ニューズウィークのファクトチェック担当記者トム・ノートンAP通信の記者アンジェロ・フィシェラはいずれも、エリザベスの主張を否定し、被害を受けた工場は新型コロナワクチンの保管施設ではなく、真菌感染症などを治療するための麻酔薬や抗感染症薬の製造工場だと報じた。

にもかかわらず、エリザベスのツイートへの反応を見ると、自説開陳の旋風が巻き起こっている。被害をもたらしたのは竜巻ではなく、ファイザーを狙った何らかのエネルギー兵器だとの主張すら見受けられる。なぜエネルギー兵器がファイザー工場に向けられたのかといえば、もちろん「証拠」を隠滅するためだ。少なくとも、ある匿名アカウントはそう主張していた。

多くの非現実的な主張を生んでいる竜巻被害だが、現実的な問題もいくつか危惧されている。米医療機関向け無菌注射剤の市場においてはファイザーが大きなシェアを占めており、在庫が失われたことで品不足が起きるかもしれない。1社ないし数社のメーカーへの依存度が大きく、時に過度の依存となってしまっているために生じる問題は、新型コロナのパンデミック中に繰り返し見られたが、それが改めて浮き彫りになった格好だ。

事故や自然災害はどうしたって起きるものだ。製品のサプライチェーン、特に医療品のサプライチェーンは、事故や自然災害が起きた場合にも十分な供給を維持できるだけの冗長性を確保するため、サプライヤーを十分に多様化しておく必要がある。さもなければ、多くの患者や消費者が不安定な状態で放り出されかねない。

forbes.com 原文

編集=荻原藤緒

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