1年前、カリフォルニア州を拠点とする海兵隊のF35戦闘機部隊、第314戦闘攻撃飛行隊(VMFA-314)の指揮官マイケル・オブライエン中佐は、ネバダ州のバーで同席したオーストラリア空軍(RAAF)第3飛行隊の指揮官エイドリアン・カイリー中佐と共に、太平洋をまたいだ大規模な部隊派遣構想を紙ナプキンの上に描いた。
「海兵隊は官僚主義と無縁なので、対中抑止のための作戦など、短期決戦任務に適している。空軍や海軍のような大きな組織よりも、はるかに積極的に遂行できる」とオブライエンは語る。
VMFA-314は、米ロッキード・マーチンの長距離・空母艦載型ステルス戦闘機F35Cを運用している。RAAF第3飛行隊が運用するのは、それより翼幅と燃料タンクが小さい陸上型のF35Aだ。
F35CとF35Aはほぼ同一の機体構造を持っており、VMFA-314と第3飛行隊は理論上、滑走路、燃料、武器、予備部品、そして最も重要なことに地上クルーを共有しながら共に飛行し、戦うことができる。
オブライエンとカイリーは、この理論を証明したいと考えていた。また、両飛行隊が猶予のない中でも迅速に連携し、侵略してくる敵をハイテク火力の射程にとらえることが可能だという点も証明したかった。
「この1年間、第3飛行隊はVMFA-314と共同作戦を行い、部隊運用と整備の相互運用性の深化を目指してきた」と、カイリ―は両飛行隊による共同声明で述べている。昨年、両飛行隊はネバダとハワイの両州で合同訓練を実施した。「2023年は特に整備と補給に重点を置いて、相互互換性をテストし、証明しようと試みている」という。
隊長2人が紙ナプキンに描いた配備計画は公式に承認され、先月、VMFA-314の基地から6機のF35Cが発進。米空軍や委託先の給油支援を受けつつ太平洋を横断して、オーストラリア南東部ニューサウスウェールズ州にあるRAAFウィリアムタウン基地へ向かった。
給油部隊は米国に帰還し、残された海兵隊はオーストラリア軍と共に、西太平洋上空において最小限の支援だけで航空戦を展開する3週間の演習を行った。
海兵隊は身軽に移動した。「わが部隊は人員と火力と攻撃力をもたらすが、予備の尾翼を持ってくるとは限らない」とオブライエンは説明している。