第三回は、現在25歳の野尻航太さん。彼が2020年末、大学を中退して立ち上げたのがKiva(キヴァ)だ。
同社はEC向けに、延長保証サービス「proteger(プロテジャー)」を提供している。ECサイトに連携させるだけで、保証期間と料金が表示ができる仕組み。導入後の平均CVR(商品購入率)は1.4倍に上昇するという。
顧客体験を向上させるだけでなく、交換・修理により製品寿命を延伸させサステナビリティにも貢献するビジネスモデルだ。「10代の頃から起業を意識していた」と語る野尻さんに、モチベーションの源泉、ビジネスにおいて重視する点について聞いた。
・インタビュアー:馬 静前 Jingqian Ma Plug and Play Japan Ventures Principal
コンサルティングや証券会社を経て、2021年からPlug and Play Venturesに参画。日本のスタートアップ投資業務全般を統括。
社会人経験が少なくても「聞けば教えてくれる」
──大学在学中にスタートアップを起業されました。日本では珍しい選択だと思いますが、起業を決意されたきっかけは何でしょうか?高校生の時に、USJの経営再建で有名な森岡毅さんの『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』という本を読んだのがきっかけです。家族や親戚が皆、教師や公務員・士業という環境で育ち、将来は公務員になると思っていたので、衝撃的な内容でした。特に「『マーケティング思考』は、全ての仕事の成功確率をグンと上げるので、ビジネスで成功したい人は一度しっかりと学んでおくべき。なぜならばマーケティングこそがビジネスを成功させるための方法論だから」というメッセージがあり、感銘を受けたんです。
それ以降は、お小遣いをすべてビジネス書につぎ込むほど起業したい意欲が湧くようになっていました。
自分は大手企業の体質には向いていないとも思っていました。でも大学中退は親から大反対されましたね。いまだに親戚の集まりでは居場所がないです(笑)。
──「起業したい」という高校生が野尻さんのところに来たら、どんなアドバイスをしますか?
「起業は早ければ早いほどいい」と伝えたいです。日本は社会も人も優しく、聞けば教えてくれる人が多いです。企業に勤めてきた30代、40代の方がこれまでの経験や知識に基づいて、惜しみなくノウハウを教えてくれることもあります。例えば「小さなベンチャー企業がより爆発的に顧客数を増やす方法」は、営業一筋20年の方で経験を積まれた方から学びました。本当に感謝しています。