ビル・ゲイツが認めた「地中水素」を掘削するスタートアップ

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安価で扱いやすい「究極の水素」

水素は何十年もの間、クリーンなエネルギーとして注目されてきたが、その潜在能力は発揮されていない。水素を用いた燃料電池は、純粋なクリーンエネルギーとして自動車や船舶や列車、さらには定置型発電機用の燃料として使用することができる。しかし、この燃料は扱いにくくパイプラインから漏れる可能性がある。また、非常に可燃性が高く、貯蔵する際には圧縮して冷却する必要があるため、さらなるエネルギーを必要とする。
 
米国では、水と再生可能エネルギーから製造される「グリーン水素」や、天然ガスから製造されるがCO2を大気中に排出しない「ブルー水素」に、数十億ドル規模のインセンティブが向けられている。しかし、コロマは「ホワイト水素」や「ゴールド水素」と呼ばれる地中水素の方が、はるかに安価でエネルギー消費量も少ないと考えている。
 
一攫千金を狙う石油採掘者のように、彼らは自社がどこを探し、掘削しているかを開示してない。コロマの創業者たちは、最初の掘削ポイントが米国中西部にあるとだけ述べている。同社のライバルであるナチュラル・ハイドロジェン・エナジー社とハイテラ社は、ネブラスカ州とカンザス州で、独自の試験掘削を準備している。
 
現在41歳のダラーは、高校時代にフットボールとレスリングの選手として活躍した、がっしりとした体格の科学者だ。彼のラボには、さまざまな計測ツールと並んで第二次世界大戦時のジョージ・S・パットン元帥の写真が置かれ「みんなが同じことを考えているなら、誰かが考えていないことになる」という格言が刻んである。
 
ダラーは約15年前から天然水素を研究しており、アフリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなどの地質学的ミッションで世界中を旅し、その存在と発生しやすい条件を確認した。彼は、地中水素の採掘に有望な場所を分析するために、機械学習を駆使して衛星写真を解析し、石油業界の大手出身で地質学者のキャリー・フダックを含む優秀なメンバーを採用した。
 
ブレイクスルー・エナジーの技術リーダーで、デューク大学の元化学教授であるエリック・トゥーンは、コロマが「独自の技術とAIツールで、信じられないほどの優位性を築いている」と語った。
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編集=上田裕資

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