健康

2023.07.25 09:00

がんサバイバーの「生きる」を最高の1枚に。ラベンダーリングが広がる理由

出来上がった「ラベンダーリング」のポスターを見て喜ぶ稲垣さん親子(撮影=グリフィス太田朗子)

出来上がった「ラベンダーリング」のポスターを見て喜ぶ稲垣さん親子(撮影=グリフィス太田朗子)

ラベンダーリングをご存知だろうか。
advertisement

すべてのがんサバイバー(患者、体験者)が笑顔で暮らせる社会を目指すプロジェクト。

その中核は、サバイバーの命の輝きを、プロの手で1枚のポスターに仕上げる撮影イベント「MAKEUP&PHOTOS WITH SMILES」だ。資生堂と電通の有志が中心となって2017年に立ち上げた。

「ラベンダーリング愛知2023」の撮影イベントが、6月24日に愛知県がんセンターで行われた。これまで東京と大阪で主に開かれてきたが、愛知県でも、地元のボランティアたちの力で、毎年定例のイベントとして定着しつつある。
advertisement

その舞台裏では、がんサバイバーの思いをつなぐリレーがあった。

会議室がラベンダー色の撮影スタジオに

この日、愛知県がんセンター1階の大会議室に、ラベンダー色の背景の撮影スタジオが設けられた。
撮影前にスタッフから教わり、メイクアップする参加者

撮影前にスタッフから教わりながら、メイクをする参加者(撮影=グリフィス太田朗子)


公募で選ばれた20代から70代のサバイバー9人は、資生堂のスタッフによる個別レッスンを順に受けてメイクアップを仕上げ、ヘアをセットし、ポスターに添える英語のワードを画用紙に書いて、撮影に臨んだ。

愛知県在住のみほさん(21)は、「Value myself」とつづった。高校時代に右卵巣とリンパ節の摘出手術を受け、大学に進んだ今も経過観察中。闘病を通じて「自分を褒めてあげること」の大切さに気付いた経験を「自身の価値」という言葉に込めた。

撮影を担当する資生堂クリエイティブ本部のフォトグラファー・金澤正人さんは、多くの女優たちの撮影を手掛けたレジェンドだ。みほさんの清楚さ、芯の強さを表現しようと、さまざまなポーズを求め、「いいよ、かわいい!」と笑顔を引き出しながら連写した。
撮影に臨む、みほさん

撮影に臨む、みほさん


その周りで「アイドルみたい!」「惚れた!」と機関銃のようにエールを送っていたのが、名古屋を中心に活動するオンラインがん患者サロン「止まり木」の久田邦博さんと村山民愛(みね)さん。

コロナ禍の2020年春から、200回を超えるサロンを開いて、全国の患者らの心をつなげてきた。共に東京でのラベンダーリングの体験者で、撮影時に仲間たちが緊張をほぐしてくれた経験から、アップテンポの声援で場を盛り上げた。

愛知県春日井市の須崎朗雄さん(51)は、胃がんの転移などで予断を許さない病状の中、「イエーイ(遺影)・コレクション」と称して、笑顔の写真をSNSにアップしてきたが、両手を広げ「Endless Smile」と記したポスターに「最強の一枚。遺影決定です。いや、きっとがんが消えました」と笑った。

同県愛西市の法律事務所職員・稲垣敦子さんは、5月に同センターで乳がんの手術を受けた際に、募集の掲示を見て申し込んだ。「Enjoy my life」のメッセージを添えたポスターは、高校3年生の娘・智華さん(17)と頬を寄せ合うツーショット。「娘と姉妹に見えるぐらいきれいに撮ってもらえた」と感激していた。


次ページ > 「いきいきした患者さんの姿」を知ってもらいたい

文=安藤明夫

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事