この夏、ヨーロッパへ移籍した多くの日本人選手の新天地は、ベルギーやオランダ、スイスなどの1部クラブ。これらの国はイングランド、スペイン、イタリア、ドイツ、フランスの5大リーグの次に位置し、ステップアップが望めるグループとされている。
なかにはクロアチアの強豪クラブと交渉中の選手もいる。セカンドグループよりも下にランクされる意外な国に映るが、これには各国1部リーグの上位クラブが出場するヨーロッパ最高峰の戦いの舞台、〈チャンピオンズリーグ〉を戦える点が大きい。
移籍する彼らには共通点もある。Jリーグを経由せずにドイツ1部のクラブ入りする大学生4年生を含めて、すべての選手が直近の日本代表活動に招集されていない。だからこそ、昨年のワールドカップ代表に名を連ねた日本代表のFW町野修斗の2部リーグへの移籍は大きな驚きを伴って受け止められた。
湘南ベルマーレのエースストライカーとして、昨シーズンのJ1得点ランキングで2位の13ゴールをマーク。今シーズンも前半戦だけで9ゴールをあげていた町野。彼が選んだのはドイツ2部ホルシュタイン・キールというクラブだ。
しかも町野は、他国の1部リーグのクラブという選択肢もあったのか、という問いに「問い合わせやオファーはベルギーであるとか、スコットランドですかね」と明かしている。その上でドイツとはいえ、2部のキールを新天地に選んだのはなぜなのか。
足りないものを得られる環境
町野が海外移籍を意識するようになったきっかけ昨年9月の日本代表戦。後半開始とともに投入されながら、何もできずに終えたアメリカ代表との国際親善試合だった。「アメリカ戦でレベルの差を痛感したときに、すぐにでも海外へ出た方がいいという気持ちが固まりました。その後に代表に選ばれたワールドカップでは試合に出られませんでしたけど、近くで一緒に戦ってみて、常にこのレベルでプレーできないと、これからも代表では活躍できないとあらためて思いました。年齢的にも決して若い方じゃないので、ヨーロッパでプレーしているほとんどの代表選手から『お前も早くヨーロッパに来た方がいい』と言われたこともありました」