シャンパーニュ・ビルカール・サルモンの7世代目として、家族経営のメゾンの指揮をとるマチュー・ロランド・ビルカール社長の言葉だ。
特別な畑から、特別なシャンパーニュを
ビルカール・サルモンは、1818年に、シャンパーニュ地方を東西に流れるマルヌ川沿いのマレイユ・シュール・アイ村に、ニコラ・フランソワ・ビルカールとエリザベス・サルモン夫妻により設立された。ビルカール・ファミリーは、それより前の16世紀からこの村に住んでいて、街中を歩いていると、あちこちにメゾンのマークが見られ、ファミリーにとって縁が深い場所であることがわかる。シャンパーニュ地方のブドウ畑の大半は街の外に広がっているが、街中にも畑がある。ビルカール・サルモンが所有する「クロサンティレール(Clos Saint-Hilaire)」という名のマレイユ村の1ヘクタールほどの小さな畑だ。サンティレールとは、この村の守護聖人に由来する。そして、フランス語で「囲い」を意味するクロの名の通り、そこは、2.5メートルの塀に囲まれていて、極端な気温や湿度から守られるという。
ビルカール・サルモンは、この畑から、少量生産の特別なキュヴェを作っている。もともと、マチュー氏の叔父ジャン・ロランド・ビルカールが、所縁の深いこの村の南・南東向きの土地に目をつけ、1964年にピノ・ノワールを植えたことが始まりだ。1995年ヴィンテージから、この名前を付したキュヴェをリリースした。
ビルカール・サルモンのワインの多くは、ステンレス製のタンクで、低い温度で時間をかけて発酵を行い、ピュアな果実が特徴的な繊細でエレガントなスタイル。メゾンの顔とも言えるロゼ・シャンパーニュがその好例だ。
これに対し、クロサンティレールのワインは、ピノ・ノワールを樽で醸造して作られる。1964年に植樹された古木のピノ・ノワールからは凝縮した力強い味わいのワインが生まれ、それに樽由来のスパイスやローストしたアーモンドのニュアンスが加わる。こうして、メゾンにとって特別な場所から、他のキュヴェとは一味違う、個性豊かなシャンパーニュが生まれている。