AP通信によると、ドイツ連邦公衆衛生医師会(BVOeGD)の会長は7月18日、朝と夕方の涼しい時間帯に働くことは労働者のリスクを軽減し生産性を向上させるという点で合理的だと述べた。
この勧告に対しては、カール・ラウターバッハ独保健相も反論はせず、夏場のシエスタは「確かに悪い提案ではない」し医学的にも理にかなっているとツイート。ただし、勤務時間の調整は企業各社に委ねられるべきだとの見解を示した。
今週は、世界各地で過去最高の気温を更新しそうな気象状況となっている。また、米海洋大気庁(NOAA)の発表によれば、先月は観測史上「最も暑い6月」だった。
気温が最も高い時間帯を避けて勤務できるよう労働時間の調整を求める声も相次いでいる。
米テキサス州では今夏、郵便配達員が勤務中に民家の庭で倒れて死亡した事故を受けて、米郵政公社(USPS)が勤務時間を1時間前倒しした。死亡した配達員の妻は、もっと根本的な勤務時間の変更を行って配達員を守るよう訴えている。
フロリダ州でもウエストパームビーチの郵便配達員らが、配達車両にエアコンがついておらず車内温度が60度に達する中での配達を余儀なくされているとして、テキサス州と同様の勤務時間変更を求めていると地元ニュース放送局WPTVが伝えている。
インドでは、今年4月に7日連続で40度超えの熱波に見舞われた際、労働省が各州当局に労働時間の調整と労働者への飲料水・氷のうの提供を勧告した。
スペインでも昨年夏にマドリードで路上清掃員が熱中症により死亡したことから、政府は今年、猛暑時の屋外作業を禁止すると発表した。
米国では、一定の気温を超えた場合に労働者を保護するため日陰の設置や休憩・給水の時間確保を義務付けている州は、6州のみ。連邦政府機関である労働安全衛生局(OSHA)が定める暑さに特化した規制はなく、ジョー・バイデン大統領が法律への明記を指示している段階だ。労働統計局(BLS)によると、米国で2011年以降に暑さの中で働いたことが原因で死亡した労働者は436人に上る。
英国物理学会(IOP)の2022年の研究では、蒸し暑さに起因する労働時間の損失は世界で年間6500億時間に上り、この40年間で少なくとも9%増加している。暑さに関連した労働生産性の損失額は、年間2兆ドル(約278兆円)を超えると推計されている。