クリーンすぎるターコイズ水素をつくるフィンランドのスタートアップ

リリースベース(松村)

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燃やしても二酸化炭素を出さない水素に期待が寄せられているが、そんな水素にも、製造過程で二酸化炭素が排出される問題がある。水の電気分解で二酸化炭素を排出せずに作られる水素はグリーン水素と呼ばれ、環境に配慮した水素利用の本命と目されているが、それを超える現在もっともクリーンな水素が「ターコイズ水素」だ。

ちなみに、水素は環境負荷が少ない順に色分けされている。もっと細かい分類もあるが、大きくわけて、製造に化石燃料を使用するグレー水素、天然ガスや石炭から回収するブルー水素、水を電気分解して作られるグリーン水素、そしてターコイズ水素の4つとなっている。

ターコイズ水素はメタン(HC4)を熱分解して作られるので、排出されるのは水素(H2)と炭素(C)のみ。世界中でターコイズ水素の生産技術開発競争が行われているが、いちはやく量産技術を開発したのがフィンランドのスタートアップHycamite TCD Technologies(ハイカマイト)だ。

ハイカマイトのターコイズ水素は、熱分解リアクターでメタン(CH4)を水素(H2)と炭素(C)に分解し、さらに炭素フィルター、ガスフィルターを通して炭素を回収する。回収された固体炭素は、カーボンナノファイバーや次世代リチウムイオン電池などの高機能炭素素材として提供される。熱処理には電気を使うためある程度の二酸化炭素が排出されるものの、グリーン水素の電気分解で使用される電力の13パーセントほどで済むとのことで、環境負荷は非常に低い。

ハイカマイトは第三者割当増資による総額2500万ユーロの資金調達を実施するが、そこに、航空、エネルギー、化学などの分野で長い実績を誇る総合商社、双日が参加することになった。ハイカマイトはこの資金で、年産2000トン規模のデモスケールプラントを建設する。また双日は、ハイカマイト技術の日本国内での独占的実施権を獲得。今後はハイカマイトと共同で、2020年代後半の事業構築を目指すということだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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