一見ルール違反ともとれる行動を止めることなく、その生徒の個性として尊重し、アイデアを新しいスポーツにつなげた歴史は、ラグビー・スクールの校風を示す象徴的なストーリーとして知られている。
その英国の寄宿学校が9月、千葉・柏の葉にラグビー・スクール・ジャパンとして開校する。ラグビー・スクールとしては、タイ・バンコクに次ぐ2つ目の海外校。日本においては、2021年に岩手・安比に開校した「ハロウスクール」に次ぐ英国ボーディンススクールの上陸となる。
11歳から18歳までが通う中高一貫校で、授業料は年間約450万円。そこに250万円以上の寄宿料が加わり、合計で年間700万円程度がかかる計算になる(寄宿料がかからない通学制も選択可能)。英国本校の学費と比較して割安というわけではない。日本の“高校卒業”資格は得られないが、文科省が認定するIGCSEとA Levelのカリキュラムを履修し、進学に備えることになる。
首都圏エリア初として注目される同校で受けられる「英国式教育」とは何か。また、同校が掲げる「全人教育」とは何か。ジャパン校の初代校長を務めるトニー・ダービー氏に聞いた。
「興味を持たせる」英国式教育
ダービー氏はこれまで約26年にわたって英国の全寮制、通学制の学校に携わってきた人物だ。ラグビー・スクール本校では14年間ハウスマスター(生徒と寄宿者で生活する担当教師)を務めた。その視点で、「個人的な解釈ですが」と断りつつ、英国式教育を次のように説明する。「端的に言えば、すべての子どもの個性や才能を信じるというものです。世界の多くの国々では、教育において“知識”の習得を重視しているところが多いですが、英国ではまず“興味を持ってもらう”ことを大切にしています」
そのうえで、ラグビー・スクールは、子どもの興味を得うるカリキュラムや施設を備える。具体的には、学問に劣らずアートやスポーツ関連の教科が充実し、それに必要なダンススタジオ、劇場、ギャラリーなどを備えているということだ。
一方で、日本の教育にも強みがあり、例えばPISA(国際的な学習到達度調査)のような世界的なランキングで、特にSTEM項目で上位に入ることを挙げ、「そうした日本の教育を否定するのではなく、違うものとしてバランスをとっていく」と語る。