宇宙

2023.07.21 14:00

謎の「停滞」がなければ地球の1日は60時間だった

2億年後には地球において1日の長さが25時間になるはずだ(Getty Images)

地球の1日は長くなっている。月の引力が地球の海を引っ張り、長い時間をかけて自転を遅くしているため、2億年後には1日の長さが25時間になるはずだ。

しかし、もし約6億年前に終わった謎の停滞がなければ、1日はすでに60時間になっていただろうと学術誌『Science Advances』に掲載された最新論文では述べられている。

地球が本来よりも速く自転しているというささいな出来事はあるが、月は年に3.8cmずつ徐々に遠ざかっているため、非常に長い目で見れば1日は長くなっていく。現在地球の1日は、1世紀に約1.7ミリ秒ずつ長くなっている。

今回発表された研究によると、地球は14億年間、一定速度で自転し、1日の長さは19.5時間で変わらなかった。45億年前に初めて形成された時、月は今よりずっと地球に近くに存在し、地球の1日は約10時間だった。

自転速度の変化が停滞した理由は、月の影響(地球の自転速度を決定する最も重要な因子)と、太陽が及ぼす潮汐への影響(地球の自転を速める)との自然共鳴(釣り合い)だ。地球の大気で起きる熱潮汐波は太陽光によって引き起こされる。

月が地球の海を引っ張り、その結果できた海の膨らみ(波)が摩擦を起こして自転を遅くする一方「太陽光も大気潮汐を引き起こして同じような膨らみを作ります」とトロント大学カナダ理論天体物理学研究所(CITA)の理論天体物理学者であるノーマン・マレーはいう。「太陽の引力がその大気の膨らみを引っ張り、地球に回転力を与えます。ただし、月のように自転を遅くするのではなく、自転を速めます」

研究チームが発見した数十億年前に起きた自然共鳴は、地球の温暖な大気が太陽の大気潮汐を増幅したためだと、彼らは考えている。

「ブランコに乗った子どもを押すのに似ています」とマレーはいう。「押したことで同期が外れると、ブランコはあまり高く振れません。しかし、ブランコの周期に合わせて、一端で止まったところを押してやれば、ブランコに推進力を与えて、ずっと遠く、高くへと動かすことができます」

地球の温度上昇(今まさに起きているように)は、地球を大気の共鳴から遠ざけ、不均衡を大きくする。「私たちは温暖化によって地球の温度を高くすると同時に、共鳴振動数も高くしているため地球の大気を共鳴状態からさらに遠ざけています」とマレーはいう。「その結果、太陽から得る回転力が弱まり、1日の長さは、温暖化がなかった時よりもすぐに、長くなるでしょう」

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事