パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(以下、PPIH)が絶好調だ。2023年6月期第3四半期累計売上高は1兆4572億円、営業利益817億円となり、前年同期比で売り上げは867億円増、営業利益は186億円増になった。売り上げ、営業利益ともに、第3四半期累計および単独としても過去最高だ。
驚くのは、これが一時的な勢いによるものではないことだろう。23年6月期は第3四半期までの毎四半期でも過去最高を記録しており、通期でも増収増益が見込まれる。達成すれば34期連続の増収増益で、現在36期連続で増収増益を続けるニトリに次ぐ記録となる。そのニトリは24年3月期に減収予想を出している。PPIHがニトリに代わって“最も継続的に成長している企業”ナンバーワンの座につく日が現実味を帯びてきた。
無論、34年間ずっと追い風に乗ってきたわけではない。直近では新型コロナウイルスの感染拡大がグループを襲った。食品や日用品の比率が高いユニーなどGMS事業は大きなダメージを受けなかったものの、中核であるドン・キホーテなどのディスカウント事業は緊急事態宣言やインバウンド消失の影響を受けて落ち込み、都心の店舗では売り上げが昨対比20%になったところも出た。
実は危機に瀕した現場の社員がこぞって手に取った小冊子がある。PPIHグループの理念集「源流」である。136ページからなる新書サイズの冊子で、全社員に配布されている。PPIH代表取締役社長の吉田直樹は次のように明かす。
「社員は普段から『源流』をよく読んでいます。ただ、昨対比がよいときって、あまり挑戦しないんですよ。コロナで売り上げが消えて、さすがにみんな切羽詰まったのでしょう。いつにも増して真面目に読んだ社員が多かったんじゃないですか」
自社の理念をまとめてかたちにしている企業は少なくない。ただ、経営層の思いとは裏腹に、現場には浸透せずお飾りで終わっているケースが目立つ。一方、PPIHグループでは現場が「源流」をよりどころにして仕事をしている。
そこにPPIHグループが継続的成長を続ける秘密があるのではないか──。そうした仮説を立ててトップふたりにダブルインタビューを申し込んだ。「源流」を執筆した創業会長兼最高顧問の安田隆夫は現在海外事業を見ており、シンガポールに居を構えて陣頭指揮に当たっている。帰国したタイミングで、グループ全体の経営を見ている吉田とともに取材に応じてくれた。