映画

2023.07.15

異例の「俳優スト」でハリウッド激震 何に抗議? 影響は?

米ロサンゼルスで開いた記者会見で、ほかの組合員らと並んで拳を上げるSAG-AFTRA会長で女優のフラン・ドレシャー(中央、2023年7月13日撮影、Frazer Harrison/Getty Images)

米国の俳優ら16万人が加入する労働組合が、14日からストライキに入った。動画配信の報酬や人工知能(AI)の規制をめぐる製作会社側との交渉決裂が理由。組合員が出演する映画やテレビ番組の撮影はすべて中断されることになり、娯楽業界に激震が走っている。ハリウッドでは脚本家の労働組合もストを続けており、俳優と脚本家の同時ストという異例の事態になっている。

「強欲な企業の犠牲に」

スト入りしたのは映画俳優組合・米国テレビ・ラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)。ダンカン・クラブツリーアイルランド事務局長は13日の記者会見で、理事会の全会一致でスト実施が決まったと発表していた。その前日には、製作会社や動画配信会社が加盟する全米映画テレビ製作者協会(AMPTP)とSAG-AFTRAの新たな契約がまとまらないまま、現行の契約が満了した。

同事務局長は、何週間にもわたって交渉を続けたが、動画配信の支払いやAIに関する核心的な問題は解決されなかったと説明。経営側が「組合側にほかの選択肢を残さなかった」ため、組合としてはストライキという「最後の手段」に訴えざるを得なかったと述べた。

同席したSAG-AFTRAの会長で女優のフラン・ドレシャーは「わたしたちは強欲な企業の犠牲になっている」と訴えた。

一方のAMPTPは、ストライキは「わたしたちが望んだ結果では断じてない」とし、SAG-AFTRAが「この業界で生計を立てている大勢の人たちを経済的に苦しくする道を選んだのは残念だ」と表明。交渉が妥結しなかったのは「わたしたちではなく組合側が選んだことだ」とも指摘した。

SAG-AFTRAの組合員を起用している映画やテレビ作品の撮影は、本人が別の契約で働いているのでない限り、米国外も含めてすべて中断される見通しだ。上映会や記者会見など、作品の宣伝活動に俳優が参加することも禁じられる。

AIの台頭と動画配信の拡大

これに先立ち、全米脚本家組合(WGA)も5月にストに踏み切り、いまも続けている。両組合が訴えていることは主にふたつある。ひとつは、映画業界でAIの活用が広がるなか、契約でAIからの保護の強化を認めること。もうひとつは、テレビや映画のビジネスモデルが劇的に変わっているのを踏まえ、動画配信での作品使用に対する報酬を引き上げることだ。

AMPTPは、作品の使用料や最低報酬率を大幅に引き上げることを提案したほか、AIが俳優の肖像を使用する場合は俳優側の承諾を得ることを義務づける「画期的な」案も提示したと説明している。映画やテレビ作品の監督でつくる全米監督協会(DGA)は、スト抜きでAMPTPと契約をまとめている。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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