俳優と脚本家たちは、報酬の引き上げに加え、人工知能(AI)を用いたコンテンツの不正使用に対する保護や、作品がストリーミング配信された際の再使用料(レジデュアル)の支払いを求めている。
このストは、すでに経済的打撃をもたらしている。筆者がこの記事のためにアナリストや法律専門家に取材したところ、すでに経済的事情から家を引き払っている人を知っているとの声が相次いだ。また、収入減を補うためにガレージセールを開いたり、オンラインで身の回りのアイテムを売りに出した人もいる。
ロサンゼルス・タイムズは、5月に脚本家のストライキが始まった際、その経済的打撃は2007年のストで生じた推定21億ドル(約2900億円)の損失をはるかに上回るとの見通しを示していた。影響は、住宅市場を含む南カリフォルニア経済のあらゆる面に及ぶ可能性がある。人々が家を買わなくなれば、家賃が上昇する。消費者はすでに高インフレと金利の上昇に直面しており、事態は深刻だ。
ミルケン研究所は2007年のスト後に、3万7700人が仕事を失ったとする報告書を発表した。ハリウッドの大スターも参加する今回のストの打撃は30億ドル(約4200億円)を超える可能性があり、早急に合意に達しない限り、映画の都ハリウッドは暗い日々を送ることになるだろう。
スポーツ業界には追い風?
このストは、消費者の視聴習慣に変化をもたらし、人々の興味は、スポーツやリアリティ番組など、台本のない番組にシフトし続けるだろうと語る専門家も居る。アマゾンやアップルは、以前からスポーツ中継に力を入れており、今回のストでスポーツ分野への資金の流入が加速するかもしれない。また、このストの影響は、俳優や監督だけでなく、裏方の人々にも及ぶ。映画やテレビのシリーズは、作品ごとに約300人のクルーを抱えているとされ、大工やケータリング、ヘアメイク、衣装、制作アシスタントといった人々の多くが仕事を失うことになる。
その結果、多くの人が財布を引き締め、店やレストランでの支出を減らすだろう。クリーニング店の売上も減少するし、キャストやクルーに宿泊場所を提供するホスピタリティ業界も同様だ。