ただし、EVを生産終了することにかけては、GMは他の追随を許さないと言っても過言ではない。「恥ずべき決断の殿堂」には、EV1、シボレー・スパークEV、キャデラックELR、シボレー・Boltとシボレー・Voltいったそうそうたる顔ぶれが並ぶ。ちなみに、筆者はこのうち2車種を所有した経験がある。
誰がGMのEVを殺したのか?
GMは、テスラの10年以上前から、EVの製造・販売を手がけてきた。GMのEV1が発表されたのは1996年のこと。これは、テスラの最初の車種である「ロードスター」発表から実に12年前だ。EV1はすばらしい車で、時代を大きく先取りしていた。発売当初から、米国のハリウッドスターや、環境保護論者、グリーンエネルギー擁護論者に強く支持された(EV1は、カリフォルニア州とアリゾナ州のみでリースされた)。
だが結局、GMはEV1の未来を悲観し、2003年には公式に計画を中止した。この顛末は、クリス・ペイン監督のドキュメンタリー映画『誰が電気自動車を殺したか?』に取り上げられている。
続いて、2010年に次なる画期的モデルが登場した。シボレーVoltだ。プラグインハイブリッドだが、近距離では100%電気自動車として機能し、長距離では、(ガソリン発電機を利用した)ハイブリッドカーとして走行する。
Voltは、2012年に発売されたテスラ「モデルS」と比べて2万ドル(約276万円)も安価だったが、GMはほとんど販促をせず、当然ながらほとんど売れなかった。GMは2019年、Voltの生産を終了した。生産期間を通じた全世界の販売台数は約17万7000台だった。
そして、それ以前の2016年には、GMはシボレー・スパークEVも殺している(おそらく聞いたこともないモデルだろう)。2013年夏に発売されたこのコンパクトカーは、GMがその可能性を信じさえすれば、安価な「最初の1台」のEVとして人気を博したかもしれなかった。