小質量のブラックホール
CEERS 1019が天文学者にとって驚きなのは、これまで初期宇宙で見つかったブラックホールよりもはるかに小さいことだ。質量は太陽のわずか900万倍で、天の川銀河の中心にあるブラックホールの約2倍でしかない。それでもずいぶん大きいと思うかもしれないが、初期宇宙で見つかった他のもっと明るい超大質量ブラックホールの質量は、太陽の約10億倍だ。
ウェッブ宇宙望遠鏡は、これほど遠く、かすかなブラックホールを発見した初めての望遠鏡であり、現在、理論物理学を裏づけるために観測データの提供を急いでいる。
「研究者たちは長年、初期宇宙に質量の小さいブラックホールがあるはずだと知っていました。ウェッブはそれをここまで鮮明に捉えた初めての望遠鏡です」とCEERSサーベイチームのメンバーで、メイン州ウォータービル、コルビー大学のデール・コチェフスキーはいう。「今私たちは、小質量ブラックホールがいたるところにあり、発見されるのを待っていると考えています」
驚異の銀河
11個の比較的明るい銀河が発見され、その一部はビッグバンからわずか約4億7000万~6億7500万年後に存在していることも同様に驚きだと、研究に関わった研究者たちはいう。これまでウェッブ宇宙望遠鏡は宇宙初期にこれほど近い銀河をほとんど見ることはできないと考えられていた。「ウェッブが送ってきた遠方銀河の超詳細なスペクトルの量に私は圧倒されました。このデータは信じられないほどすばらしい」とCEERSサーベイチームのメンバーで、NSF NOIRLabのパブロ・アラバルはいう。初期銀河に関するこのウェッブ宇宙望遠鏡のデータは、星の形成と銀河の進化に関する天文学者の理解を変えるかもしれないと考えられている。
CEERSサーベイはまだ始まったばかりだ。
「これまで、初期宇宙の天体に関する研究は、大部分が理論的でした」とCEERSサーベイの責任者でテキサス大学オースティン校のスティーブン・フィンケルスタインは語る。「ウェッブ宇宙望遠鏡を使うことで、極端に遠いブラックホールと銀河を見ることができるだけでなく、正確に測定できるようになりました。それはこの望遠鏡のとてつもない力です」
(forbes.com 原文)