一方で、完熟マンゴーをいち早く顧客に届けるために一般流通に乗せられないことで起こる課題がある。まず、廃棄マンゴーの問題だ。加工用としての販売数が少なく、豊作の年には2トン余りのマンゴーを廃棄したこともあるという。また新規顧客の開拓が難しく、リピート客がメイン。これらの課題を解決すべく、NFTに活路を見出し、今夏「マンゴーNFT」を限定販売した。
川満さんとタッグを組んだ仕掛け人は、コミュニケーションアプリ「Discord」を活用した有志の農業Web3コミュニティ「Metagri研究所」を運営する甲斐雄一郎さん。これまでもスイカやトマトなどの農産物とNFTを掛け合わせて販売してきた。農業Web3コミュニティの実態と、マンゴーNFTの取り組み、「農業 x ブロックチェーン」を活用したブランディングの手法とは──。甲斐さんに聞いた。
農業Web3コミュニティ設立のきっかけ
私は「Metagri研究所」というDiscordを主体として活動するWeb3コミュニティの創設者で、コミュニティ内では「農情人」という名前で活動しています。農業、情報、人財という3つのキーワードを軸に、農業のブランディングを手がける私の法人名でもあります。文章を書くのが好きで、2021年ごろからKindleでNFTやAIをテーマに新しい農業についての電子書籍を出版してきました。地道に執筆活動を続けていると、徐々にこの分野に関心をもつ人から問い合わせが増えてきて、「農業コミュニティ」の場が欲しいという声を受け、2022年3月にオンライン上でコミュニケーションができるDiscordのチャンネルを立ち上げました。
「Metagri研究所」は「農業の常識を超越する(Meta+Agri)」をキーワードに、今までやってこなかったことに挑戦するコミュニティです。NFTやブロックチェーン、AI技術と農業を掛け合わせ、どうやったら農家が所得向上できるかということを研究しています。失敗もたくさんありますが、そのなかでノウハウを貯めていって、農家が最新技術を活用した手法を提案したいと考えて活動しています。
農業を今までの「きつい・汚い・かっこ悪い」というイメージから、「カッコよくて・稼げて・感動を生み出す」ものに変えたいです。
「Metagri研究所」には、農家に限らず様々な業界の有志が集まっていて、他業界の方が9割近くを占めます。今のコミュニティメンバーは約600人、その中で農家は5、60人という異色のコミュニティになっています。Discordでのコミュニケーションを中心に、週1回の全体ミーティングや、プロジェクトごとのミーティングを行っています。
農業に課題感を持っているメンバーが多いですね。既存の課題をどう変えられるかを知りたい、携わりたいという方が集まっていると思います。実際に農作業をしている人ばかりではないので、自分に何ができるかをそれぞれが考えています。耕すだけが農業ではないんです。