経済・社会

2023.07.17 09:30

「女の子だからピンク」が固定観念になった経緯

木村拓哉
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メリーランド大学名誉教授のジョー・パオレッティは、著書『Pink and Blue(ピンクとブルー)』の中で、19世紀、親たちは子どもの性別を強調しないように白い服を好んで着せていたと説明している。「1880年当時、1歳の息子に男らしさを表現する服を着せたり、幼い娘に女らしさを強調する服を選んだりする親はほとんどいなかった。【略】性別を強調するような服は、性別によらない無邪気さこそが子どもの最大の魅力とされていた時代にはそぐわなかったのだ」

そこから時が経ち、20世紀半ばになると、娘は母親、息子は父親のような服を着るようになる。しかし、1970年代に入ると、子どもたちはユニセックスな服を着るようになった。その頃、米国では女性の社会進出が盛んになり、彼女たちが既存の枠にとらわれない役割を担うようになっていた。そして、自分自身や娘たちのために女性的ではない服を選ぶようになったのだ。

「1970年代、ピンクは伝統的な女性らしさと強く結びついており、フェミニストの親たちは娘にピンクの服を着せることに強く反発した」とパオレッティは書いている。1970年代半ばのユニセックストレンドの絶頂期には、こうした反ピンク感情は非常に強く、大手小売りのシアーズのカタログには、2年間、ピンク色の幼児服が掲載されなかったほどだ。

1980年代半ばになると、ピンクとブルーの性差が強まり始めた。出生前検査の普及がこうした傾向のきっかけになったのかもしれない。出生前検査のおかげで、両親は子どもが生まれる前に男の子か女の子かを知ることができた。この知識は、生まれてくる赤ちゃんの性別を反映した色で子ども部屋を飾るための十分な時間を、親たちに与えることになった。その結果、現代ではピンクやブルーの風船、ケーキ、紙吹雪を使ったパーティーで子どもの性別を明らかにすることで、両親は喜びを分かち合っている(子どもに性自認を選択させることに前向きであることを示すために、紫色を好んで使う人もいる)。
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