健康

2023.07.16 08:00

日焼け止めは有害無益? SNSで広まる主張をファクトチェック

Getty Images

日焼け止めは肌によくないし、皮膚がんを防げるわけでもない──。SNSでこのところ、そんな主張が出回っている。だが、科学的な研究では、それとは正反対の結果が出ている。

マイクロインフルエンサーの「Tan Man(日焼け男)」は、「人の皮膚は太陽光線の純粋なパワーをまるごと吸収するようにできている」と吹聴。日焼け止めは肌にも環境にも悪いと断じ、そんなものを塗らずに素で肌を焼こうじゃないかと説き勧めている。

一部のヘルスケア系オンライングループは最近、日焼け止めのような皮膚がんを予防するとされる製品は、製薬業界や医療業界からの押し付けだという説を広めている。こうした企業は太陽を悪者扱いして、自分たちの製品を売り込みたいだけだ──と。

Tan Manとは別のインフルエンサーも、ツイッターのフォロワーに向け、日焼け止めを使うのをやめて、代わりに血中のビタミンD濃度を高く維持しようと呼びかけている。「ビタミンD濃度が高ければ、自己免疫疾患はほとんど発症しなくなる」からだという。

こうした主張は確かな根拠に基づいたものなのだろうか。まずビタミンDに関して言えば、自己免疫疾患の予防にはあまり効果がない。ハーバード大学医科大学院のメディア・出版部門「ハーバード・ヘルス・パブリッシング」の記事によると、ビタミンDのサプリメントの摂取によってそのリスクが下がった人は、1000人あたり9.5人にすぎなかった。

日光を浴びることと皮膚がんの関係についてはどうか。カナダ内科学会が発行する「カナディアン・メディカル・アソシエーション・ジャーナル」に発表された研究論文によると、皮膚がんの診断例のじつに80〜90%が紫外線(UV)に関連している。

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの皮膚科医、サイラ・ジョージは「自然界には発がん性のあるものがあるということを理解しないといけません。大量の紫外線もその一つです」と注意を促している

「人体は、日焼けによるダメージに対処する素晴らしい防御メカニズムを備えていますが、わたしたちの多くが一生のうちに浴びることになる過剰な日光のダメージを克服できるほど進化しているわけではありません」(ジョージ)
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翻訳・編集=江戸伸禎

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