映画

2023.07.13 12:00

映画『バービー』に「中国の機嫌取り」との批判 作中の地図が政治問題に

FlickDirect Inc / Shutterstock.com

FlickDirect Inc / Shutterstock.com

近日公開される映画『バービー』に登場する南シナ海の地図に、中国が主権を主張する領域を示す「九段線」とみられるものが描かれていたことがわかり、政治問題に発展している。ベトナムは同作の国内上映を禁止。一方のフィリピンでは、映画審査機関による「精査」の結果、上映が許可された。
advertisement

米マテルが製造する人気のおもちゃであるバービー人形を題材にした同作は、人気俳優のマーゴット・ロビーとライアン・ゴズリングが、現実世界で冒険を繰り広げるバービーとケンを演じる話題作。米国ではクリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』と同時公開されることもあり、21日の公開前からソーシャルメディアで話題を呼んでいる。

だが今月3日、ベトナムが「九段線」の描写を理由に同作の上映禁止を発表したことで、政治的論争が勃発した。南シナ海はベトナムやフィリピン、中国を含む周辺国が主権を主張している海域で、2016年にはハーグの仲裁裁判所がフィリピンの訴えを認めて中国の主張を退けたにもかかわらず、中国は現在も主権を主張している。

製作元のワーナー・ブラザースは、同作に登場する地図は「子どもじみた」ものであり、政治的立場を表明するものではないと弁明している。だが政治論争は米国にも波及し、テッド・クルーズら共和党議員からは、九段線描写は「中国共産党の機嫌取りだ」などといった批判が相次いだ。
advertisement

南シナ海で中国が主権を主張する領域を示した「九段線」(shutterstock.com)南シナ海で中国が主権を主張する領域を示した「九段線」(shutterstock.com)

同作の公開が19日に予定されているフィリピンの映画テレビ審査格付委員会(MTRCB)は12日、厳格な審査の結果、作品内で描かれている線は九段線ではなく「バービーがバービーランドから現実世界に向かう経路」を描いたものだとの結論に達したと発表した。

AFP通信によると、MTRCBはフランシス・トレンティノ上院議員に送った書簡で、ワーナー・ブラザースに対して地図上にある問題の線を「ぼかす」よう要請したと説明。九段線は断続する9本の線からなるが、作中の地図には短い線が8本しか描かれておらず、フィリピンやマレーシア、インドネシアが描かれていないと指摘した。MTRCBはフォーブスの取材に対し、この書簡を送った事実を認めている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事