これは統計を取り始めた2012年の約1.95倍にあたる人数で、この10年間、連続して前年を上回り続けて、過去最高を更新中だ(図表1)。単純計算で、1日あたり50人超が認知症に関連して行方不明になっているイメージだ。
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認知症の人によく見られる症状には「記憶障害」と「見当識障害」がある。
認知症初期段階である「記憶障害」では、直近のことから数日前までの短期記憶が失われて、外出したものの目的が何だったのかを忘れてしまったり、普段行き慣れた店などの場所がわからなくなってしまったりすることはよくある。
また、高齢に伴う一般的な「物忘れ」と「記憶障害」の違いは、次のようなものだ。昨晩食べた夕飯のおかずが思い出せないのは物忘れの範ちゅうだが、記憶障害の場合は、夕食を食べたという記憶そのものがない。記憶障害では、その記憶がまるまる抜け落ちてしまうのだ。
一方、「見当識障害」は、周囲の人やいまいる場所、時間などの状況がまったくわからなくなってしまうという症状だ。
たとえば、ふとしたことから昔の記憶がよみがえり、短期記憶が失われたことで、いまいる家が自宅という認識がない状態となる。以前に住んだ家などを思い浮かべて「家に帰る」と思い立って家を出たものの、「記憶障害」と「見当識障害」から現在地がわからず、迷ったり道順や目印などを忘れてしまったり、自分が今どこにいるのかわからなくなる。
そして、徘徊することになり、自力で帰ってこられず見つからなければ、行方不明者になる流れだ。
認知症行方不明者は7日以内で所在確認
認知症による行方不明者が増え続けているというデータを見て、行方不明になりっぱなしの人の累積数が徐々に増えていると理解する人もいるかもしれないが、それは違う。警察では毎年新たに行方不明者届を受理しており、その数が増え続けている状況にあると捉えるのが正しい。図表2は2022年の行方不明者について、所在確認までにかかった期間をまとめたものだ。うち認知症の欄を見ると、行方不明者届の受理当日に所在確認ができた割合は77.5パーセント、7日以内までで見ると99.5パーセントが所在確認されていることがわかる。
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