共和党のトミー・タバービル上院議員(アラバマ州選出)は、この5カ月間に少なくとも200回にわたり米軍の昇進・指名人事を遅延させている。これは、州外で中絶手術を受けることを希望する米軍人に休暇と旅費を支給する国防総省の政策を撤回させるため、タバービルが用いている戦術だ。
CNNによると、タバービルは今年2月から高位の将官や提督の昇進を阻止し始めた。上院で承認を保留しても指名人事を完全阻止することはできないが、多数派を占める民主党のチャック・シューマー院内総務は通常の人事手続きよりも時間のかかる上院での指名プロセスを進めざるを得なくなる。承認が滞っている人事の件数が多いため、手続きの完了までには数カ月を要することになりそうだ。
バーガー司令官の退任にともない、スミス副司令官が司令官代行として職務を引き継ぐが、昇進が承認されない限り、副司令官職を置くことはできない。
米海兵隊の司令官が不在となるのは、南北戦争以前の1859年1月6日にアーチボルド・ヘンダーソン司令官が在職中に死去し、翌日まで後任が任命されなかったとき以来。
CNNによると、上院軍事委員会のジャック・リード委員長(民主党)は「このような党派心むき出しのやり口(でスミスの昇進を否定するの)は、海兵隊および全軍人に対する侮辱だ」と批判した。
また、バーガー司令官は10日の退任式で「司令官の指名が承認され職務に就けるよう、上院が役割を果たす必要がある」と述べた。
タバービル議員の事務所にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
国防総省は2月16日、連邦最高裁が「ロー対ウェイド判決」を覆したことを受けて、中絶手術を受けるために他州へ行く必要が生じた軍人と扶養家族に対し、最大3週間の休職を認めると発表した。テキサス州やオクラホマ州など、妊娠中絶に関する権利が特に厳しく制限されている州の多くに主要な米軍基地があり、国防総省は「米兵とその家族が個人的な医療上の決定を下す時間と融通性を得られるよう」休職制度を導入したとしている。
米軍では、今後さらに空席ポストが増える恐れがある。ニューヨーク・タイムズによると、陸海空軍の各参謀総長に加え、統合参謀本部議長のマーク・ミリー大将も年内に退任する見通しだ。
共和党のリサ・マカウスキ上院議員(アラスカ州選出)は「今後すべてにおいて人質を取るつもりか」と党派的対立に基づいた妨害工作を非難した。
(forbes.com 原文)