北米

2023.07.11 15:30

米国人の60%が「TikTokが安全保障上の脅威」と回答、世論調査

安井克至

DANIEL CONSTANTE / Shutterstock.com

ピュー研究所の新たな世論調査によると、60%近くの米国人がTikTokを米国の国家の安全保障に対する脅威だと考えている。米国の議員や一般市民は、中国企業が運営するTikTokのデータの取り扱いに監視の目を強めている。

今回のピュー研究所の調査は、モンタナ州のグレッグ・ジアンフォルテ知事が州内でのTikTokの使用を禁止する法案に署名した直後の5月中旬に、5100人の成人を対象に実施されたもので、7月10日に公開された。それによると、回答者の59%が、TikTokが米国の国家安全保障に重大な、もしくは小規模な脅威を与えていると回答した。脅威ではないと回答したのは17%で、わからないが23%だった。

共和党の支持者や共和党寄りの回答者は、このアプリを脅威と考える傾向がやや強く、10人のうち7人が脅威と考えていた。民主党の支持者や民主党寄りの回答者の10人に5人もこのアプリに懸念を示していた。また、共和党の支持者は、TikTokがユーザーから収集したデータをどのように利用するかについて、より強い懸念を示していた。

また、この調査では世代間の意見のギャップが大きいことも明るみに出た。TikTokが重大な脅威であると回答した人の割合は、18歳から29歳の年齢層ではわずか13%だったが、65歳以上の間では46%に達していた。

さらに、TikTokを利用中の人々も、このアプリを危険視する傾向が低く、脅威だと回答した人の割合は10人に4人に留まっていた。

TikTokの運営元のバイトダンスは3月下旬、米国のTikTokのユーザー数が1億5000万人に達し、米国の人口のほぼ半数に利用されているとアナウンスしていた。

全米での禁止には高いハードル

中国企業が所有するTikTokは、個人データが中国政府の手に渡り、国家の安全保障に脅威となる懸念が指摘されている。米国は、何度もこのアプリの禁止を検討してきたが、全国的な禁止はまだ実現しておらず「表現の自由」を定めた憲法修正第1条が争点となるため実現しない可能性が高い。しかし、大半の州と議会はセキュリティ上の懸念から政府用デバイスでのアプリの使用を禁止しており、モンタナ州は最近、アプリの全面禁止を可決した最初の州となった。

TikTokは、モンタナ州を訴え、アプリの全面禁止が「根拠のない憶測に基づく前代未聞の異常な措置」だと述べ、アプリが中国政府に情報を提供する可能性があるという主張には何の根拠もないと主張した。しかし、このアプリに対する懸念は依然として根強い。

5人の上院議員は6月、外国の監視から米国人のデータを保護する法律(Protecting Americans' Data From Foreign Surveillance Act)の草案を提出した。彼らは「外国の敵対勢力への大量の米国人の個人情報の輸出を阻止し、プライバシーを守る」ことを望んでいる。TikTokの幹部は、中国政府が米国のユーザーデータを要求したことはないと主張し続けている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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