とてもショッキングな出来事があったからです。2019年、妊娠していた従姉妹が、妊娠合併症から産前うつになってしまいました。その影響で、彼女の第二子は産後、亡くなってしまったんです。
この出来事を機に、婦人科系にはメンタル領域での課題が多いことを知りました。実際に苦しんでいる人も多く、その課題を解決するための手段として「フェムテック」に興味を持ちました。
もともと“社会起業”をしたいと考えていたこともあり、解決したい課題があればモチベーションを持ち続けられるのではと思いました。
——ウクライナ出身のアンナさんですが、日本で企業したのはなぜですか。
日本での在学中に起業することになったからです。ただ、Floraは日本だけでなく世界的な企業を目指しています。
世界的に見ると、日本のフェムテック市場にはまだまだ成長の余地があります。AIや機械学習を活用している企業が少なく、画期的で面白いハードウエアもほとんどありません。
フェムテックの当事者は女性ですが、日本の場合、理系の背景を持つ女性のファウンダーはすごく少ないですよね。京都大学の工学部も、男子学生は800人ぐらいいるのに女子学生は30人ぐらいしかいません。
そもそもIT系のソリューションを生み出せる女性が限られているので、フェムテック分野全体が遅れているのではないでしょうか。
また、日本の場合は大手企業が強く、スタートアップが食い込めていない状況です。多少UI/UXがわかりづらくても、大手だからと信用して使っているユーザーが多いのかなと思います。
海外には日本製より優れたサービスがたくさんあるので、海外を重点市場として捉えていない日本企業も多いのではないでしょうか。
一方でFloraは、グローバルレベルのビジネスを展開することを前提としています。IT大国である母国ウクライナなど海外のエンジニアに入ってもらっていますし、私も常に世界の動向を観察して、優れた技術を取り入れるようにしています。
私が外国人だからこそ、どこよりも早く海外のトレンドをつかみ、日本市場の動きを予測できるという強みがあります。
——2022年4月には月経妊活アプリ「flora」をローンチ。どのようなこだわりがありますか。
まず、当事者である女性の声を正確に理解するため、アプリ開発の前に約100人にインタビューを行いました。日本でこうしたインタビューはすごく難しくて、簡単な市場調査ではなかなか本音を教えてくれません。
ですから1人1時間〜2時間、しっかり向き合って話を聞き、集めた声をもとにユーザー中心のアプリを開発しました。
現在、そのダウンロード数は7万件と想定以上の伸びを見せています。今年3月にはChatGPTを活用したチャットアシスタント機能「Flora AI」を開発しました。女性の健康に関する、正確で安全な情報提供やアドバイスができる新機能です。
これからもユーザーにとって一番良いプロダクトになれるよう、開発を続けます。