最近は欧州最大級の空港である英ヒースロー空港でストが回避されたほか、フランス各地での年金改革反対などのデモも下火になったため、航空業界はこの夏見込まれる大量の顧客に最小限の混乱で対応できると期待していた。しかし、ユーロコントロールの管制官のスト発表で見通しは再び暗転した。
英タイムズ紙が業界関係者の話として伝えたところでは、欧州全域で1日最大1万2600便が遅延もしくは欠航するおそれがある。管制官たちは、旧態依然の設備や人手不足、戦略的な計画ができていないと思われる点などに抗議するという。
ユーロコントロールは、欧州の空を行き来する1日3万以上の便を管理している。ロシアの侵攻後、メンバー国のウクライナで以前使われていた空域の20%で商用機の飛行が禁止されたため、役割はさらに複雑になっている。欧州の空域を通過するすべての航空機はユーロコントロールへの飛行計画提出が義務づけられている。
ユーロコントロールは先ごろ、今夏1日最大3万7500便超に達すると見込まれるピーク時のフライトの遅延をなるべく抑えるため、航空便の利用予定者に時間を厳守するよう呼びかけていた。旅行会社のホッパーによると欧州は今夏、地域別で米国人にとって最も人気の訪問先となっており、これが混雑の一因となっている。
新型コロナウイルス禍による繰り延べ需要によって、航空運賃は5年ぶりの高水準となっている。欧州ではロンドンやパリ、ローマ、リスボン、アテネなどが人気の旅行先だ。
米ニューヨーク・タイムズ紙は、予約が埋まって受け付けを断る旅行代理店が相次いでいると伝えている。イタリアでは6月に空路で訪れた外国人観光客がコロナ禍前の2019年同月に比べ9%近く増加し、記録的な多さを記録した。
欧州では通常、8月が最も旅行者で混雑する。大勢の団体客や長い行列を避けようと、今月は欧州の人たちが域内各国への旅行に出かけている。ただ、旅行業者によると、パリのルーブル美術館やバチカンなどではすでに数時間待ちの行列がみられるという。
多くの旅行者は欧州が昨夏に見舞われた熱波や山火事を避けたいとも考えているが、もう手遅れかもしれない。南欧では例年8月の平均気温を4月時点で記録している。
(forbes.com 原文)