小型のペースメーカーがBluetoothなどの技術を使って無線通信を行う場合、バッテリーを大量に消費してデバイスの寿命を極端に縮めてしまうことが課題となっている。
独自の通信システム
アボットのエンジニアは「i2i」という独自の通信システムによってこの課題を解決した。この通信システムは、血液の導電性を利用して高周波の電気パルスを送信し、信号を伝達している。「小型デバイスが心拍ごとに相互に通信しているにも関わらず、効率性の高いテレメトリによって十分なバッテリー寿命を実現することが可能だ」とガンツは話す。アボットが295人を対象に行ったAveir DRの臨床試験の結果は、医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(New England Journal of Medicine)』に掲載された。それによると、安全性と有効性の両面で目標を大きく上回ったという。被験者の97%以上が、植え込みから3カ月後も心室と心房がともに正常に鼓動しており、目標の82%を上回った。
「Aveir DRがすばらしいのは、心室と心房のデバイスが相互に通信することだ」とこのレポートの著者で、マウントサイナイ医科大学の電気生理学者であるビベック・レディ(Vivek Reddy)は話す。レディの研究室は、アボットから助成金を得ている。
彼が強調するのは、被験者295人中、ペースメーカーの植え込みで重篤な合併症が起きたケースはわずか1件であった点だ。また、処置が必要な合併症を起こした患者はわずか8人(3%未満)で、85%は合併症をまったく発症しなかった(目標は78%だった)。「非常に安全だ」とレディはいう。
昨年アボットに入社し、最高医療責任者に就任したガンツは、それ以前に25年間心臓病患者の治療に携わってきた。彼によると、この新技術の大きな利点は、手術跡を残すことがなく、植え込み後の回復も大幅に早いなど、従来に比べて患者の生活が格段に快適になることだという。
「リードレスペースメーカーは、装着していることが他人にはわからない。患者にとって、これは画期的なことだ」と彼は述べた。
(forbes.com 原文)