スポーツ

2023.07.11 09:30

バルセロナが強行した、出稼ぎ弾丸ツアーの顛末

6月6日。強行された親善試合は日本サッカーにメリットはあったのか/photo by Etsuo Hara (Gettyimages)


これが6月第3週になれば、国際サッカー連盟(FIFA)が定める国際Aマッチデー期間に入る。バルセロナの主力の大半が各国代表に招集され、20日の国際Aマッチデー期間終了とともに、今度はチーム全体が7月9日までシーズンオフに入る。
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一方で今シーズンのJ1リーグ戦では、7月中旬から約2週間の中断期間が設けられている。この間にマンチェスター・シティやバイエルン・ミュンヘン、インテル、パリ・サンジェルマンなど、ヨーロッパを代表する強豪クラブの来日がすでに決まっている。

バルセロナもこの時期に来日すれば、問題のない日程で親善試合を組めた。しかし、前述したように6月末までに臨時収入を得る必要があり、約6万8000人を収容できる国立競技場を大前提として、6月第2週での親善試合開催をJリーグ側へ打診したわけだ。

さらに対戦相手として、バルセロナで16年間にわたってプレーしたレジェンド、アンドレス・イニエスタが所属する神戸に白羽の矢を立てた。イニエスタが愛着深い古巣バルセロナと対峙する構図ならばさらに盛り上がる、といった期待もあったはずだ。
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ただ、指名された神戸はシーズンの真っ只中にあった。3日に川崎フロンターレをホームに迎え(台風の影響で試合は中止・延期)、10日にはセレッソ大阪と敵地で対峙する。リーグ戦にはさまれた7日には天皇杯2回戦もホームで予定されていて、物理的にはバルセロナ戦を組み込めない状況にあった。

しかし、ここで特例が認められる。神戸の天皇杯2回戦が14日に「変更された」のだ。

振り回される関係者

神戸の申請を天皇杯実施委員会が承認した形だが、天皇杯の主催は日本サッカー協会とJリーグが務める。そして、神戸-バルセロナの主催も神戸ではなくJリーグ。神戸は国立競技場のある東京都とともに主管に名を連ねていた。異例の展開の末に開催された親善試合には、Jリーグ側の総意が反映されていたと見ていい。

しかも、他の天皇杯2回戦は予定通り7日に行われた。1回戦を勝ち抜き、当時J1の首位だった神戸との戦いへ闘志を高めていたJ3のAC長野パルセイロはたまらない。

7日に神戸で試合がある前提で、サポーターも含めて移動や宿泊などの予定を立てていたのだろう。シュタルフ悠紀監督は自身のインスタグラムでこう訴えた。

「やむを得ない理由による日程変更については柔軟に対応する必要があります。しかし、天皇陛下の名前が付いている日本一のカップ戦、更には国内トップリーグの上位争いにも影響を及ぼす日程変更の理由が、興行を目的とした親善試合となると話は別です。(中略)その申請がなんの説明もなく通ったことに関しては驚きしかありません」

神戸のファン・サポーター有志連合、S.U.K.F.(Supporters Union for Kobe Football)も、クラブに対する不満を公式サイト上で表明する異例の行動に打って出た。

おりしもイニエスタが契約途中の今夏をもって、5年間所属してきた神戸を退団。古巣バルセロナとの対戦が、神戸での最終戦になると複数のメディアで報じられていた。

神戸側からの情報発信がなかった状況で、地元神戸ではなく東京での一戦がイニエスタの見納めとなるのではないかとS.U.K.F.は特に憂慮した。(その後にイニエスタは7月1日に、ホームでの北海道コンサドーレ札幌戦をもって退団している)
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