食&酒

2023.07.15 17:30

アメリカ由来の中華料理「チャプスイ」 日本での現地化の歴史と現在

外食チェーン「際コーポレーション」の中島武社長は福生の異国情緒が好きで、中華料理店を開いたという

外食チェーン「際コーポレーション」の中島武社長は福生の異国情緒が好きで、中華料理店を開いたという

前回のコラムでは、いま一部のマニアの間で注目されている東京都内の「インド中華」について紹介した。

このインド中華の特徴として、「シュエズワン(四川)」や「マンチュリアン(満洲)」など中国の地名を冠した奇妙なメニューがあるのだが、さらにもうひとつ「チャプスイ」と呼ばれるユニークな料理もある。

チャプスイとは、19世紀に中国の主に広東省出身の労働移民たちが船でアメリカや世界各地のイギリス植民地へ渡り、当地で暮らしていたときに生まれた安価な料理が起源とされる。

豚肉や野菜などを炒め、スープを加えて煮た後に片栗粉でとろみをつけてそのまま食べるか、ご飯や麺にかけて食べる。八宝菜に似ているが、国や地域によって炒める中身は異なるという。

その後、20世紀になると、アメリカでは中華レストランの定番メニューのひとつになっていく。中国から世界各地への大量出国者が続いていた時代の産物だといえる。インドではチャプスイがアメリカ料理として持ち込まれたことから、「アメリカン・チャプスイ(American Chop suey)」と呼ばれている。

東京都江東区大島にある南インド料理店「マニハラ」では、アメリカン・チャプスイをメニューで「インド風あんかけカタヤキソバ」と説明している。注文すると、麺の上にトマトケチャップで味つけされた肉や野菜とともに甘酸っぱい餡がかかっていて、明らかに中華料理にはない味だ。しかもかた焼き麺なので、不思議な味わいがある。
東京都江東区大島の南インド料理店「マニハラ」のアメリカン・チャプスイ

東京都江東区大島の南インド料理店「マニハラ」のアメリカン・チャプスイ


そして、このチャプスイはかつて日本にも広く存在していたという。今日においてはもはや絶滅危惧種といっていいかもしれないが、今回、いまでも食べられる店があることを知った。

それはどんな料理なのか。その店ではどういう理由でチャプスイを提供しているのか。筆者は東京都内でチャプスイが食べられるという4つの店を訪ねたので、レポートしてみたい。

祖師ヶ谷大蔵の南インド料理店「スリマンガラム」のアメリカン・チャプスイ

祖師ヶ谷大蔵の南インド料理店「スリマンガラム」のアメリカン・チャプスイ


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文・写真=中村正人

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