食&酒

2023.07.15 17:30

アメリカ由来の中華料理「チャプスイ」 日本での現地化の歴史と現在

外食チェーン「際コーポレーション」の中島武社長は福生の異国情緒が好きで、中華料理店を開いたという

60年以上前からチャプスイは提供されていた

東京近郊、福生市の中華料理店「韮菜万頭」(福生市福生2218)のオープンは1992年で、外食チェーンの「際コーポレーション」の中華第1号店だという。甘いオレンジの味つけをしたチリソースを唐揚げにからめたオレンジチキンなどのアメリカ中華も出す。平日は米軍関係の客も多いという。
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とはいえ、この店では数年前からチャプスイは通常のメニューから外されていた。そこで、日本人の店長に話をして、特別につくってもらった。

「韮菜万頭」の米軍関係者の客を意識した20世紀的な人物像を描いた内装

「韮菜万頭」の米軍関係者の客を意識した20世紀的な人物像を描いた内装


いただいたのは、中華麺の上にエビや豚バラ、レンコン、タケノコ、キャベツなどの具がたっぷりの餡がかかった「チャプスイ麺」だ。

福生の「韮菜万頭」のチャプスイ麺。具だくさんでボリュームがある

福生の「韮菜万頭」のチャプスイ麺。具だくさんでボリュームがある


一般に日本で餡かけ中華として知られる中華丼との違いについて、店長は「中華丼は醤油ベースの味つけだが、うちのチャプスイは塩味でお酢が使われ、酸味が利いているのが特徴。社長がアメリカでチャプスイを食べて美味しかったとのことで、福生という土地柄もあり、メニューに導入したらしい」と話す。チャプスイ麺だけでなく、ご飯に餡かけするチャプスイ飯もあるという。
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新宿区の高田馬場駅に近い中華料理店「餃子荘ムロ」(新宿区高田馬場1-33-2)では、醤油ベースに五香粉などの特製中華スパイス入りのチャプスイを出す。メニューには「五目野菜のうま煮」と説明されていて、麺やご飯にかけたりしない一品料理である。

高田馬場の「餃子荘ムロ」ではチャプスイは酒のつまみとして提供される

高田馬場の「餃子荘ムロ」ではチャプスイは酒のつまみとして提供される


店主によると、この店は創業70年超の歴史があり、祖父が元ジャズメンで、戦後すぐにこの地で開店。当時からチャプスイを提供していて、祖父の娘である叔母さんからレシピを教わったという。

「餃子荘ムロ」のメニューでは「チャップスイ」と書かれている

「餃子荘ムロ」のメニューでは「チャップスイ」と書かれている


大田区の蒲田にある創業58年という町中華「寶華園」(大田区蒲田5-10-1)には「エビチャプスイ定食」というメニューがある。

この店のチャプスイの特徴はケチャップ味で、具材はモヤシやキクラゲ、タケノコなどの一般の野菜炒めと同じようなものだが、餡かけになっている。もう一品「豚チャプスイ定食」もあって、ケチャップの優しい味わいから、完全に和食化していることがわかる。

蒲田の「寶華園」のエビチャプスイ定食。ご飯と味噌汁、漬け物が付く

蒲田の「寶華園」のエビチャプスイ定食。ご飯と味噌汁、漬け物が付く


同店主人の先代は、1962年開業の有名中華「後楽園飯店」の調理人だったそうで、その頃の中華料理店ではチャプスイをメニューに入れていた店も多かったという。
次ページ > 4店目は、台東区上野の老舗洋食レストラン「精養軒」

文・写真=中村正人

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