暮らし

2023.07.14 09:00

オーガニックは誰のため? 先進国ドイツと北海道に共通点

ドイツ在住オーガニック専門家 レムケなつこ氏。

続いて訪れたのは、十勝清水町で自然栽培と慣行栽培の両方を展開しているさわやま農場だ。さわやま農場は、「人間が収穫物を独り占めしない」という方針で運営されている。通常、農業は人間が食べるものを作るというのが基本だが、さわやま農場では鳥や虫が食べなかった分を人間がいただくという発想で、生物多様性の保全に努めている。
advertisement

さわやま農場の澤山あずさ氏は、「トウモロコシをアライグマが食べて、移動したその先でフンをしてもらい、その場所で発芽して命を繋ぐ。これがトウモロコシが望む本来の姿なのではないかと思うんです」と語りかける。
さわやま農場の澤山直樹、 あずさ夫妻とお子さんたち。食べチョクにて直接野菜を購入することも可能。

さわやま農場の澤山直樹、あずさ夫妻とお子さんたち。食べチョクにて直接野菜を購入することも可能


「この話を聞いて本当に感動した」というレムケ氏は、「オーガニックは認証を取得することも大事ですが、自然界のあるべきサイクルを踏まえて農作物を作るということが本質。人間の都合ではなく、動物や植物の都合も踏まえて、全体として何が最適かを探り、生命活動の循環をデザインしていく必要があるんです」と補足する。

次世代に誇れる農業を

帯広を中心に活動しているアグリシステムは、オーガニック小麦粉の製造や販売、農業コンサルをベースとしながら、バイオダイナミックファーム(再生型農業)やワイナリー、薪窯のパン工房、オーガニックスーパーやカフェ、森の学校など、多角的に展開する規模の大きな会社だ。

同社の伊藤英拓代表は、「私たちは自ら生産もしていますし、生産者を支援したり、お客さま同士を繋げたり、物を作って直接お客さまへ販売したりと、さまざまなチャンネルを持ち合わせています。子どもたちの未来のために、そういった繋がりをすべて循環させるようなオーガニックヴィレッジを作ることが目標です」と大きな志を胸に精力的に活動している。
アグリシステム株式会社の伊藤英拓代表と、オフイビラ源吾農場の篠江康孝代表。

アグリシステム会社の伊藤英拓代表と、オフイビラ源吾農場の篠江康孝代表


「伊藤さんに経営面のお話も聞かせてもらったんですが、バイオダイナミックファームなどは、まだまだ利益が出ていないそうです。それでも、自分たちの農業を通じて地域の環境をできるだけ良い状態にしていきたいという信念に基づき、利益度外視で熱意を持って取り組んでいる姿に心を打たれました」とレムケ氏。

伊藤氏が強く意識しているのは、ソーシャルレスポンシビリティ(社会的責任)や環境保護だ。自分たちの会社のためだけではなく、地球環境を再生させていくこと、同じ志を持った農場を支援していくこと、お客さまに質の良い生活を提供していくことなど、すべての活動の中心に「人や社会、地球への優しさ」を据えることが、アグリシステムのポリシーである。
次ページ > ドイツの人々がオーガニックを買う理由

文=国府田 淳 協力=山本淳平

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事


advertisement