もともとは、海辺に住む人の為に作られたビーチサンダルを、街で身につける高感度なプロダクトへとコンセプトを切り替え、リ・モデル、発売に至り、SNSを使ってPR。その一連のプロセスと想いを取材した。
それは、大学のPR戦略授業から始まった
濡れた地面でも滑らず、毎日履いても廃れない丈夫なアイテムとしてサーファーや離島に住む人を中心に愛されてきたビーチサンダルがある。漁業従事者用のサンダルを略した、「ギョサン」は、奈良県御所市に本社を構える「丸中工業所」のロングセラー商品。過去には2019年、50年振りにリニューアルし、都市部に住む人にも履いてもらいたいという願いを込めて、ギョサンのネット販売事業を行うまるた商店より、townのTからネーミングした「ギョサン カリプソTYPE-T」を発表。従来品に比べ、表面に施されていた装飾を削ぎ落とし、鼻緒の幅を広げた事で歩きやすく滑りにくく、ミニマルで洗練されたデザインへと進化した。元々、日本人の幅広・甲高の足型にフィットした作りが売りの「ギョサン」だが、創業以来、絶えまなくアップデートを図ってきた経緯がある。
そんな「ギョサン カリプソ TYPE-T」の新色モデルが、2023年6月にリリースした。立役者は、慶應義塾大学環境情報学部3年に在籍する現役大学生、小林虎太郎。
「昨年の春学期に履修したPR戦略の授業をきっかけに、この1年間で商品化まで辿りつきました。授業で与えられた『自分が人に薦めたい物を、薦めたい人に伝える戦略を考える』グループ課題に対し、ギョサンのサンダルを取り上げた事からこのプロジェクトが始まったのです」
小林が所属する学生グループが、これまで年齢層の高かった「ギョサン」のターゲットを、都市部に住む10代後半から20代前半の若者に絞り、「まるた商店」に提案した。すると、品質には絶対の自信を持っていたものの、実は若い層にアプローチしたかったのだが上手くいかずに悩んでいた、企業の問題点を知ったのだという。