学生間で認知されていないギョサン
幼い頃から、虫取りや釣りなど、自然の中で遊ぶ事が大好きだった東京生まれの小林。10歳の夏休みからは、果敢にも奄美群島の加計呂麻島に滞在し、島に住むおじさん達に海遊びを習うなど、大自然に囲まれた体験も。大学入学後は、建築デザインの研究室に所属する一方、探検サークルやダイビングサークルにも所属するアクティブな学生としてキャンパスライフを謳歌。かと思えば、休日には、ファッションを入口とした高校生のキャリア教育プロジェクトにメンターとして携わり、その模様をWWDに執筆するなど、興味の趣くままに多方面で活動している。
自然とファッションとデザインを愛する小林が「ギョサン カリプソ」を深く知る為に先ず着手した事は、アンケート調査。Googleフォームを使い、インスタグラムのストーリーズで協力を仰ぎつつ109人に行なった。敢えて性別や学校名などは無記入のフォーマットにしたので、回答者の具体的なプロフィールまでは分からなかったものの、グループメンバーのインスタグラムのフォロワーから推察するに、大半は慶應義塾大学藤沢キャンパスの学生であると考えられた。
アンケート内容は、シンプルに2つに絞った。その結果、(1)ギョサンを知っていて使用している 9.2%、知っているが使った事はない 12.3%、聞いた事はある 0.9%、知らない 77.1%。(2)ギョサン カリプソTYPE-Tを知っていて使用している 0%、知っているが使った事はない 0%、聞いた事がある 0%、知らない 100%、という惨憺たる結果に。
つまり、学生の間では、従来の「ギョサン」の認知度が低く、最新の「ギョサン カリプソ TYPE-T」に至っては、企業努力で機能が進化したものの、若者の間では全く認知されていないという残念な結果になった。
企業とモノ作りへのリスペクトから新色が誕生
このアンケート結果を基に「まるた商店」とのやり取りが始まり、春学期が終わるタイミングで、「ギョサン」のPRをやってみませんか?というオファーが舞い込んできた。「授業が終わってグループが既に解散していたので、僕1人でこのお誘いを受ける形になりました。その後、まるた商店さんに直接伺った時に、当初こちらが提出したターゲットの『都市部に住む若者向けのギョサン』というブランディングが採択されて、PRと新商品作りへと本格的に動き始めたのです」。何せ、本格的なPRは初めて。商品開発も初めてという、初めて尽くし。とはいえ、コム・デ・ギャルソンやアンダーカバーやセリーヌといったハイファッションをこよなく愛する小林ならではの視点から商品開発をアドバイスしていく事に。その際、いの一番にこだわったのは、意外にも「カラー」であった。
「ギョサンは、50年以上も続く歴史あるブランドなので、既に多くのカラー展開があり、従来品との差別化をどうしたらいいだろうか?と悩みました。その結果、今の若者に支持される2色のカラーにこだわってみたのです。微妙な色味や表面加工を変えたりと徹底的に試作を繰り返しました」。そして完成したのが、長年にわたる「ギョサン」が持つ JAPANプロダクトへのリスペクトの着想から生まれた「SUMI」と「KINARI」という2つの新色。表面にマット加工を施す事で、お洒落な服とも調和する仕上げに。さらに歩行時の足スレを軽減するべく、足とサンダルとの接触面も工夫するなど、機能性アップにも成功した。