気候・環境

2023.07.08 09:30

巨大砂雲が米南部に接近 サハラ砂漠から大西洋渡り

2020年に米国を襲った「ゴジラ砂雲」の衛星画像(NASA)

カリブ海では現在、サハラ砂漠からの大規模な砂雲が米南部フロリダ州に向かって進んでおり、今週末に米南東部の大気の質を低下させ、降雨量を減少させる可能性がある。一方で、砂雲の到来は、鮮やかな日没や、同地域が現在見舞われている記録的な暑さの緩和、沿岸沖でのハリケーンの発生阻止といった効果をもたらす可能性もある。

砂雲は6日、米海洋大気庁(NOAA)の衛星がカリブ海東部で発見。8日までにフロリダ州に到達し、週末にかけてさらに西方のテキサス州まで広がる可能性もある。これにより、これまでカナダの山火事の煙の影響をほとんど受けていなかった地域でも、大気の質が低下する恐れがある。

気象予報サイトのAccuWeather(アキュウェザー)によれば、砂雲は空気の質を低下させる一方で、日光を遮り、気温を下げる効果もある。世界各地ではここ1週間にわたり記録的な暑さが続いており、米国立気象局によるとフロリダ州では7日の熱指数(湿度と温度を組み合わせた体感温度)が40.5度に達する見通しだ。

ただ今回の砂雲は、数百万人に影響を与えた2020年の「ゴジラ砂雲」ほどの規模にはならないとみられる。サハラ砂漠の砂嵐は定期的な気象現象だが、米ニュースサイトのVoxによると、2020年の砂雲は通常よりも密度が高く、より多くの粒子を含んでいた。

大気の質の悪化はその地域に住む人にとっては悪いニュースだが、Voxによれば、砂雲は熱帯雨林を肥沃にし、ハリケーンの発生を抑制する「重要な気候メカニズム」と関連している。大西洋海盆ではハリケーンシーズンが始まったが、砂雲が存在する海域では強い熱帯低気圧が発達しない可能性が高い。

AccuWeatherのダン・デポドウィンは「多くの熱帯暴風雨やハリケーンの発生源である熱帯波は、湿った大気で成長します。サハラ砂漠の砂雲が存在する場合、大気は通常より乾燥するため、これらの発達は妨げられる可能性があります」と解説している。

アフリカ沿岸では現在、さらに大きく密度の高いサハラ砂漠の砂雲が大西洋に向けて吹き寄せられており、11日までにフロリダ州に到達する可能性がある。同州に加え、プエルトリコ、ドミニカ共和国、ハイチ、キューバでは、砂雲の到来によって大気の質が悪化することが予想される。

forbes.com 原文

翻訳=上西雄太・編集=遠藤宗生

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