欧州

2023.07.07 11:30

ザポリージャ原発、もし爆破されれば何が起こるのか?

ウクライナ南部のザポリージャ原発での事故に備えた訓練の様子。ザポリージャで(2023年6月29日撮影、Dmytro Smolienko / Ukrinform/Future Publishing via Getty Images)

ウクライナ南部でロシアが占拠するザポリージャ原子力発電所をめぐって警戒が続いている。欧州最大級のこの原発で仮に爆発などがあった場合、どういった事態が想定されるのか。

「爆発物設置」めぐり緊迫

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は4日の演説で、ザポリージャ原発で複数の発電施設の屋根に「爆発物らしきもの」が確認されたと述べ、ロシア軍が原発に対する「攻撃のシミュレーション」を企てている可能性があるとの見方を示した。

ゼレンスキーはザポリージャ原発を戦闘に巻き込んではならないと警告し、同原発は「いかなる放射線事故からも完全に保護されなくてはならない」と強調。「放射性物質は世界のすべての人にとっての脅威だ」と訴え、「ザポリージャ原発に危険をもたらす存在はロシア以外にない」とも断じた。

一方、AP通信によるとロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は5日、ザポリージャ原発ではウクライナによる「破壊工作の脅威」があると主張。それによって「破滅的な」結果がもたらされるおそれがあるとも言及した。

ロシア国営のタス通信によれば、同国の原子力企業ロスエネルゴアトムのレナト・カルチャー顧問は4日、ウクライナが「放射性廃棄物を詰め込んだ」爆発物で5日にザポリージャ原発を攻撃することを計画していると主張。ゼレンスキーの発言を「ばかげている」と否定し、「わたしたちがなぜそんなところに爆発物を必要とするのか」とも述べた。

米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は、ロシアがザポリージャ原発を攻撃する「可能性は低い」と分析している。ロシアについては、ウクライナが原発周辺で「無責任な行動」をとっていると非難することに主眼があるとも推測している。

チェルノブイリか福島か

ロシアが昨年3月にザポリージャ原発を占拠して以来、ウクライナとロシアは互いに相手が原発に攻撃を加えていると非難の応酬を続けてきた。国際原子力機関(IAEA)は、同原発を攻撃にさらしてはならないと警告している(編集注:5日には、現時点で爆発物は確認されていないが、追加の立ち入り調査を求めていると声明で明らかにした)。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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