「ひとつぶで何度もおいしい」宇宙デブリ対策の新発想、日本企業のチャレンジ

プレスリリースより

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人工流れ星などの宇宙エンターテインメント事業や気象データ事業を展開する宇宙スタートアップALE(エール)は、これまで取り組んできた宇宙デブリ対策事業とそこで培ってきた知的財産を新会社BULL(ブル)に譲渡すると発表した。BULLは、ALEで宇宙デブリ対策事業を統括していた宇藤恭士が昨年11月に創設したスタートアップであるため、同事業はそのまま継続されることになる。

地球の軌道上には役割を終えた人工衛星やロケットの破片など、無数のゴミ「宇宙デブリ」が漂っている。これ以上デブリが増えては人工衛星や宇宙ステーションの運用に支障が出てしまうということで、NASAやJAXAをはじめ、世界の企業や団体が宇宙デブリ対策の研究を進めている。そのなかで有力候補とされている技術に、BULLも採用している「導電性テザー」がある。

これは、デブリ処理を行う衛星とデブリを長い導電性ケーブルで結び、ケーブルに電流を流しながら飛行することで地磁気とケーブルとの間にローレンツ力を発生させ、デブリの軌道を変えて大気圏に再突入させるという方法だ。ロケットエンジンでデブリの軌道を変える方式に比べて、燃料もエンジンもいらないため小型軽量、安価にできる利点がある。

ALEが考案しBULLが開発を引き継いだシステムは、この導電性テザー装置をロケットに搭載するというもの。衛星を放出して役目を終えた後、ロケットは自ら軌道を変えて大気圏に再突入して燃えつきる。いわば自律式「デブリ拡散防止装置」だ。しかも、デブリが大気圏に再突入するまでの数カ月間を利用して、軌道上で微小重力実験などが行える非回収の軌道上小型試験装置「Micro-ISS」をセットでロケットに積み、試験サービスを提供するというオマケ付き。

BULLは、「デブリ対策装置による一定の市場確保に加え、製薬、美容、食品など、宇宙だけにとどまらない産業に対してMicro-ISSによる試験機会の提供​を行うことで、販売力の強化を図る」と話している。デブリ対策をしたいロケット打ち上げ業者と、宇宙で実験をしたいコンシューマーの双方をターゲットとしたビジネスモデルが確立できれば、同社が目指す「新たな時代の宇宙開発におけるSDGs」の実現も早まるだろう。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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