第一は「専門の知」から「生態系の知」への深化。
これからは、「該博な知識」を持つことよりも、人間だけが抱ける「深い問い」を持つこと、その問いの周りに個性的な「知識の生態系」を育てていくことが、「新たな教養」になっていくだろう。
第二は「言語の知」から「体験の知」への深化。
これからは、書物から学んだ「単なる言語知」ではなく、実際の体験や映像・動画からの疑似体験を通じて掴んだ感覚的・身体的な「暗黙知」を豊かに持つことが、「新たな教養」になっていくだろう。
第三は「理論の知」から「物語の知」への深化。
これからは、専門書で学んだ「抽象化された理論」ではなく、ドキュメンタリーやルポルタージュ、自伝や随想などでの「具体的なエピソード」や「現実の物語」を通じて学んだ、人間や組織や社会についての「深い叡智」こそが、「新たな教養」になっていくだろう。
人工知能とメディアの急激な進化の中で、「教養」の在り方もまた、深化が求められている。
田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、多摩大学大学院名誉教授。学校法人「21世紀アカデメイア」学長。世界経済フォーラム(ダボス会議)専門家会議元メンバー。全国7700名の経営者やリーダーが集う田坂塾塾長。著書は『人類の未来を語る』など100冊余。