当時は、全米各都市の商業地には必ずビデオレンタルショップ(「ブロックバスタース」や「ハリウッドビデオ」など)があり、競い合っていい立地を奪い合っていた。
しかし、このDVD郵送レンタルサービスが現れ、どんな田舎に住んでいても好みの映画を自宅のポストまで届けてくれることになり、ビデオレンタルという商売を駆逐していくこととなった。
その画期的なDVD郵送レンタルサービスこそ、Netflixだった。
この革新的なサービスは、一時は、1人のアカウントで一度に7枚までのディスクがレンタル可能で、筆者も含めて周囲の人間はたいていアカウントを持っていた。
そのNetflixのディスク配送サービスが、社の25周年となる今年限りで停止される。顧客へのサービス閉鎖発表も正式にリリースされた。四半世紀前に始まった時代に終止符を打つことになる。最終ディスクは9月29日に郵送される予定だ。
予想された配送サービスの停止
全米ラジオネットワークのNPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)によると、この NetflixのDVD配送サービスは、昨年1億4570万ドルの収益を上げ、顧客が支払った平均価格に基づくと、加入者数は110万人から130 万人に相当するという。また、ピーク時の加入者数は1600万人で、これまでに会員になったことのある人の数は4000万人にのぼり、レンタル枚数の総計も52億枚だという。
これはとても大きな事業だが、一方のビデオストリーミング事業のほうはとみると、加入者数を世界中で2億3250万人と発表しており、なるほど規模感が比べものにならないことを思い知らされる。
発表がないので憶測でしかないが、いまさらDVDレンタルに加入する新規会員はほぼ見込めないなか、かつ、アメリカはこの20年、毎年、または隔年で郵便料金を値上げしてきており、ここへきてのインフレでNetflixの郵便コストも圧迫されることが容易に予想される。
近年、ストリーミング戦争はますます激化しており、以前このコラムで取り上げたように脚本家協会からの突き上げのストライキにも直面しているなか、Netflixのビデオストリーミングサービスの成長は過去1年で鈍化しており、経営環境は厳しい。
そこへきて、ビデオストリーミングと違って、DVDレンタルは在庫を抱え、倉庫を手当てし、ピッキングシステム(当該DVDをロボットが拾ってくるシステム)のメンテなどを考えると、財政的に悪化しつつあった事業を閉鎖するこの日が来ることを予想しない人は誰もいなかっただろう。