LGBTQ+(性的少数者)の権利擁護や学校で人種について教えることを支持するブランドなどに対し、主に右派の批評家や共和党の大統領候補に名乗りをあげた政治家たちが、人を非難するための言葉として使っている。
保守派は、ブランドアンバサダーにトランスジェンダー女性のディラン・マルベイニーを起用した「ウォーク」のナイキをボイコットしようと呼び掛けている。
プライド月間の広告キャンペーンにドラァグクイーンを起用したザ・ノース・フェイスとジャック・ダニエルも、同様の非難を浴びている。
そのほかアディダスと米小売大手ターゲットは、トランス女性向けの水着が子ども用の衣料品売り場で販売されているとの誤情報が流れたことで「ボイコットすべき」との批判にさらされている。
元々は「平等の実現」への合言葉
右派が「ウォーク」を独自の解釈で使用し始めるまで、この言葉は黒人コミュニティや社会正義の実現を目指す活動家たちの間で「人種を理由にさらされる脅威や不平等に意識を向けよう」と呼び掛けるために使われてきたものだった。カリフォルニア大学サンタバーバラ校で言語人類学を研究するディアンドレ・A・マイルズ・ヘラクレスは、保守派はこの言葉を「歴史的な意味に関わりなく、好きなように使っている」と指摘。CNNに対し、言葉に否定的な意味を持たせる「セマンティック・ペジャレーション(意味の悪化)」の一例だと語っている。
一方、白人のリベラル派もまた「自らを進歩的であるように見せるため、表面的なパフォーマンスのため」、あるいは何であれ「左派寄りの立場を表現するもの」として、この言葉を使っているという。黒人の活動家や学者たちは「ウォーク」の本来の意味が薄められていると批判している。
さらに「悪化させた意味」でこの言葉を使うようになっているのは、米国だけではない。ここ数カ月の間に、ハンガリーやスイス、ニュージーランドを含む各国の政治家たちの間でも「ウォーク・イデオロギー」への非難の声があがり始めている。