エルニーニョは2〜7年おきに発生する現象で、太平洋の東風が弱まることで起こる。これにより、普段は西側に吹き寄せられていた暖かい海水が海全体に広がり、海に吸収されるはずの熱が大気中に放出され、世界の気温が上昇する。
継続期間は通常9〜12カ月だが、もっと長く続くこともある。WMOによると、これまで起きたエルニーニョ現象では、南米南部やアフリカ、中央アジア、米南部では降雨が増えた一方、オーストラリアやインドネシア、南アジアの一部、中米、南米北部では干ばつが起きた。
WMOのペッテリ・ターラス事務局長は声明で、エルニーニョの再来は「世界の多くの地域と海洋で最高気温の記録が更新され、さらなる猛暑を引き起こす可能性を大幅に高めるだろう」と指摘した。WMOは、98%の確率で今後5年間のいずれかの年が史上最も暑い年となり、前回エルニーニョが発生した2016年の記録を更新すると予想している。
エルニーニョが起きると、山火事や森林火災が発生する可能性も高まる。また、天候の変動が農作物や世界の食料供給に影響を与えるため、食料不足も懸念される。米政治専門メディアのポリティコの報道によると、太平洋で獲れる魚の供給や、世界の穀物生産などに影響が及ぶ可能性がある。
また、ウイルス性疾患が増える可能性もある。世界保健機関(WHO)は6月、エルニーニョによりデング熱やジカ熱、チクングニア熱などが広がる恐れがあるとの見解を示した。
WMOによると、エルニーニョ現象が2023年下半期まで続く可能性は90%。ただ、世界の気温への影響は通常、エルニーニョ発生の翌年に現れるため、最も大きな変化は2024年になる可能性が高いという。