ウクライナと国境を接するロシア西部ブリャンスク州上空で行われたこの迎撃により、ロシア軍機の搭乗員11人が死亡した。2022年2月のウクライナ全面侵攻後、ロシア空軍が1日に被った人的・物的損害としては、これまでで最悪のものの一つとなっている。
ウクライナ空軍が7月3日に公開した動画には、パトリオットによるこの待ち伏せ攻撃の詳細を知るヒントが含まれていた。まず、このパトリオットを運用する部隊は、撃墜したロシア軍機はロシアメディアが確認している4機ではなく、5機だとみている。
攻撃編隊には少なくとも、戦闘爆撃機「Su-34」1機、戦闘機「Su-35」1機、ヘリコプター「Mi-8」2機が含まれていた。Mi-8の少なくとも1機は、レーダー妨害装置「リチャグAV」を搭載した「Mi-8MTPR-1」モデルだった。もう一方のMi-8は捜索救助用だった可能性がある。
2人が乗り込んだSu-34は、ウクライナ北部チェルニヒウ市に滑空爆弾「UPAB-1500V」を少なくとも1発撃ち込むため、ウクライナ国境に向かって高高度を飛行していたとみられる。パイロット1人を乗せたSu-35は、Su-34をウクライナによる迎撃から守っていた。
ロシア軍は数週間前に、ウクライナの都市や部隊を攻撃するため、重量約1.5トンのUPAB-1500Vを使い始めたばかりだった。UPAB-1500Vは、米国がウクライナに供与している精密誘導爆弾「統合直撃弾(JDAM)」の粗悪版といった代物だ。
UPAB-1500Vは高度約1万2000メートルから発射されると40キロメートルほど滑空できる。ロシアとウクライナの国境からチェルニヒウ市までの距離もちょうどこれくらいだ。ウクライナにはパトリオットのほか、ドイツ製の「Iris-T」、米国とノルウェーが共同開発した「NASAMS」など、西側製の防空システムが着実に提供されてきたため、ロシアの軍用機が侵入するのはきわめて危険になっていた。
戦闘機などが越境せずにウクライナ側の目標を攻撃できるUPAB-1500Vは、この問題を解決する手段の一つだった。今年の春以前は、ウクライナには境界のロシア側を飛行するロシア軍機を脅かせる地対空ミサイルシステムは旧ソ連製の「S-300」しかなく、しかもそのミサイルが枯渇してきていることも知られていた。