働き方

2023.07.12 16:00

創造的なチームづくりは「引っ越しの手助け」と同じ

デビッド・ジカレリ|Cycling’74 創業者兼CEO

『Work With Source』著者のトム・ニクソンが「『ソース』として経営者の役割だけではなく、アーティストとして世に新しいものを生み出している」と話すのが、Cycling’74 のデビッド・ジカレリだ。

日本を含む、世界中の音楽クリエイターから熱い支持を集める、ビジュアル・サウンド・プログラミング・ソフトウェアMaxの開発者であり、販売元で、米カリフォルニアに拠点を置くCycling’74の創業者兼CEOであるデビッド・ジカレリ。彼と仲間たちは30年以上、人生の大半をかけてアーティストたちの創造的プロセスをサポートするという、クリエイティブな仕事に情熱を捧げてきた。


──日本でもコアなファン層を抱える画期的なソフトウェアMaxはどのように開発されたのですか。

Maxはそもそも1980年代にIRCAMというパリの音楽リサーチラボで働いていたアメリカ人、ミラー・パケットによってつくられました。私は彼に誘われたのです。90年代にパケットはそこから派生したオーディオに焦点を当てた製品づくりをはじめ、私はMaxの開発を引き継ぐかたちになりました。Maxは音や色を数字に置き換えて扱うことができる革新的で創造的なパワーがあります。

例えば、音と色の関係性を探りたい場合、それぞれが数字によって置き換えられ、ユーザーはレゴブロックのようにそれをつなげることができます。ミュージシャンやアーティストの多くは一度つくったものを新しいものにつくり変える作品のリバイスに利用しています。私の仕事は、彼らの創造的プロセスを可視化し、サポートすることだと思っています。

新しいアイデアと職人技

──80年代に、あなたが最初に創造的プロセスにコンピュータを使うというアイデアに出合ったとき、「一生かけてやりたいことだ」と思ったそうですね。

創造性にはふたつの側面があると思います。ひとつは人々が「すごいアイデア!」と呼ぶような抽象的なコンセプト(概念)、もうひとつはその反対、家具を美しく仕上げていくような「クラフト(職人技)」です。私は、コンピュータはそのふたつ---「コンセプトとクラフト」を相互に作用させ、組み合わせることができると感じました。

芸術作品の真に愛すべきところは、驚くべきアイデアがあり、さらに細部まで美しいことです。また、ソフトウェアは、常に変わり続けることが可能です。プロトタイピングは創造性にとって重要な要素です。私と仲間たちは約30年にわたってMaxを進化させ続け、ユーザーもともに進化しています。

私自身も音楽のバックグラウンドがありますが、実はエレクトロミュージックではなく、ジャズ・ピアノです。しかし、そこで学んだ即興性は、開発やマネジメントにも生かされていると感じています。
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インタビュー=岩坪文子 写真=トーマス・オバリエ

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