この締め付けはデジタル資産業界に大きなプレッシャーを与えている。SECがバイナンスとコインベースを訴えた際の訴状に挙げられた19の暗号資産の価値は、6月初旬の提訴以来、合計50億ドルの価値を失った。さらに2つの大手取引所に対する訴訟で名指しされたトークンを加えると、SECが有価証券とみなす暗号資産の数は少なくとも65にのぼる。
そこにはバイナンスコイン(BNB)やバイナンスのステーブルコインのBUSD、カルダノ(ADA)、ソラナ(SOL)、ポリゴン(MATIC)などの主要な暗号資産が含まれ、世界全体で1兆2000億ドルにおよぶ暗号資産市場の中で合計1000億ドル(約14兆4000億円)以上という、かなりのボリュームに及んでいる。
ニューヨークの大手法律事務所ウィルキー・ファー・アンド・ギャラガーの顧問弁護士のマイク・セリグは「訴状で挙げられているトークンは、ブロックチェーンベースの暗号資産であるという点を除けば、多くの共通点があるわけではない」と指摘する。これらの暗号資産には、主要なブロックチェーンネットワークの資産やメタバースやゲームのトークン、ステーブルコイン、特定の機能を提供するさまざまなユーティリティトークンなどが含まれる。「SECはほとんどのトークンを証券とみなしている」とセリグは付け加えた。
6月初旬にニューヨークで開催されたカンファレンスで、SECのゲーリー・ゲンスラー委員長は、暗号資産の大部分が、特定の取引が「投資契約」という証券取引の定義の1つに該当するかどうかを判定する基準のHoweyテストの要件を満たしており、SECに登録されるべきだという以前からの主張を繰り返した。
ゲンスラー委員長はまた、SECが「公正な通知」を怠ったとの批判に反論し、多くのクリプト(暗号資産)関連の企業が「ビジネスを行うためのコストとして、強制執行のリスクを取る判断を下した可能性がある」と述べた。
しかし、SECとゲンスラー委員長のこの件に関する主張は、控えめに言っても一貫性を欠いている。匿名を条件にフォーブスの取材に応じた元SECの関係者は「リップル社に対する裁判で、SECはXRPの購入が証券取引である理由を詳細に説明していた。しかし、今回の訴状では同じレベルの分析は見当たらない」と述べている。