今回、海外から招聘したシェフやメディアの宿泊を提供し、ボットゥーラ氏のイベントでサービスと調理をサポートしたのはカイロの5つ星ホテル、フェアモント・ナイルシティ。ジェネラル・マネージャーのフランク・ナーブルス氏はカイロ・フード・ウィークを振り返って次のように語った。
「カイロに16年間住んでいますが、これまでに国際的な食に特化したイベントはありませんでした。今回スタッフたちは、世界のトップシェフから、最高の料理を生み出すための創造的なアプローチについて学ぶ機会を得ました。伝統的な料理を魅力的な方法で、国際的な味と組み合わせて提供することが、今求められています。
カイロは、ドバイ、ニューヨーク、ロンドンなどの他の主要都市と同様に、国際都市になる可能性を秘めており、カイロ・フード・ウィークがエジプトの料理界の才能と料理の知名度を次のレベルに引き上げると信じています」
この言葉からも、国際的な主要都市の条件として、その国を代表する美食レストランを持つことが必須、という考えが世界的に広がってきていることは明らかだ。美食を好む富裕層を呼び込み、数のツーリズムから質のツーリズムに移行するという流れにも沿っている。
エジプトには今年、ギザのピラミッド地区内に、ピラミッドを目の前に食事が楽しめる「クフ」というエジプト料理のレストランもオープンした。数カ月以内に2階にエジプト文化を生かしたテイスティングコースを提供する、ファインダイニングがオープンする予定だという。
このエリアは国所有の歴史保存地区で、レストランは美術館の一角を借り受ける形。もちろん国の理解があってのことだ。「遺跡だけではない」エジプトへ、着実に新しい顧客層を呼び込む準備が進んでいると言えるだろう。
日本でもガストロノミーツーリズムという言葉を多く耳にするようになってきた。地域らしさを黄金のような価値に変える。ここでいう「その国を代表する料理」は、「その地域を」という言葉に置き換えることも、できるに違いない。