キャリア・教育

2023.07.05 16:30

職歴は企業の成長と同じ。キャリア資産は「ストック型」思考で増やせ

石井節子

Getty Images

コンサルティング事業からスタートし、現在は個人向け転職サービスなどを手がける「人材開発カンパニー」エッグフォワード代表取締役社長、徳谷智史氏が上梓した『キャリアづくりの教科書』(NewsPicksパブリッシング刊)が、アマゾンで刊行後たちまち品切れの売れ行きだ。

本稿では同書から一部を抜粋して紹介する。


「PL型キャリア」から「BS型キャリア」へ

特に個人の市場価値を高めるうえで重要になるのが、次のキーワード「PL型キャリア」から「BS型キャリア」への変化だ。

わかりやすく考えるために、自分のキャリアを1つの会社と見立ててみよう。

PL(損益計算書)とは簡単に言えば、「一定期間内で、売上から費用を差し引いた利益」を示すものだ。

キャリアで言えば、「短期」視点で得られるもの(収入など)と失うもの(時間など)に目を向ける、ある意味で刹那的で、フロー型の考え方だ。

今の仕事の報酬(売上)を得て、限られた人生の時間(費用)を投下したあとの差し引きが、自身の市場価値と幸福度(利益)として残るとでも考えればわかりやすいだろうか(図1‐4)。

逆に、BS(貸借対照表)は、ストック型の考え方だ(図1‐5)。短期ではなく、「中長期」の視点で捉える(以下、会計に詳しくない読者は、「短期ではなく『中長期』でキャリアの資産を増やす」ことだけ意識して読み進めてもらえれば、大意はつかめるので大丈夫だ)。

「短期利益の最大化」のみを考えるな

企業活動で考えてみよう。成長し続ける会社は「短期利益の最大化」のみを考えない。もし短期の利益だけを考えるなら、新規事業に投資もしないし、将来を見据えた採用もしないだろう。だが、それではいつか成長は止まることは簡単に想像がつく。

目先の状況のみにとらわれず、投資する。将来に備えて若手も採用し、組織の未来に向けてカルチャーづくりや基盤づくりへの投資も惜しまない。そして中長期での成長を意識し、自社の手持ち資金だけではなく、資産や信用にレバレッジ(テコと読み替えてもいい)を利かせて外部から戦略的に資金調達をし、さらなる成長を遂げていく。

個人も同様だ。「中長期」の成長、やりがい、持続的な報酬などを手に入れるためには、目先の収入(PLでいえば「短期」売上)の最大化のみにとらわれてはいけない。

持続的な幸福度や市場価値(資産)を積み上げるためには、一時的に収入を減らしてでも他の成長機会を求めて転職したり、あるいは困難な体験にも時間を投資したりして(負債)、信頼や成長機会を掴むためのネットワーク(自己資本)を蓄積していく。そして、それをテコに、さらなる成長の機会を掴み、自らの価値を持続的に高めていく。このように、自分の「資産」である市場価値、つまりスキルや知識、経験を中長期視点で積み上げ、将来的な経済的メリットも享受する。

要は、自分の「いまできること」だけに注目して目先の報酬最大化を狙うのではなく、自分の「いまできること」にレバレッジを利かせ、チャレンジングな機会を掴み、自分の幅を広げ、成長することを目指していくのだ。
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文=徳谷智史

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