ウィーン新聞はハプスブルク帝国時代の1703年8月8日に創刊され、これまでの発行日数は11万6840日におよぶ。現在はオーストリア政府が所有しているが、編集権は独立している。AP通信によると今後はオンライン版に移行し、月に1回は紙版も発行することもめざしている。従業員も63人削減し、うち35人は編集部員だったという。
ドイツ誌シュピーゲルによると、ウィーン新聞は新法によって官報欄からの年間1800万ユーロ(約28億円)ほどの収入を失うことになった。トーマス・ザイフェルト編集長は新法に反対し、日刊紙の発行停止という決断は「ジャーナリズムにとって試練の時」だったと述べている。
ウィーン新聞の行く末にはここ数年、疑問がもたれていた。米ニュースサイトのポリティコによると、オーストリアのセバスティアン・クルツ前首相は2021年、「新聞の運営や資金手当ては国のやる仕事ではない」との考えを示し、ウィーン新聞についてはオンライン版のみにすることを支持していた。
一方、ウィーン新聞の編集部は今年4月、国内に日刊紙が13紙しかないことに言及しつつ、オーストリアでは「独立し、客観的で、事実に基づく質の高いジャーナリズムがかつてないほど必要とされている」と訴え、新法に反対する声明を出していた。
紙版の最終号には、オーストリア出身の米俳優で元政治家のアーノルド・シュワルツェネッガーや、元オーストリア首相のフランツ・フラニツキーとヴォルフガング・シュッセルのインタビューなどが掲載された。
シュピーゲルによると、現在も発行が続く世界最古の日刊紙のタイトルは、ドイツ・ヒルデスハイムの地元紙ヒルデスハイマー・アルゲマイネ・ツァイトゥンクが得ることになった。同紙はウィーン新聞の約2年後の1705年6月24日に創刊された。
(forbes.com 原文)