欧州

2023.07.03 08:00

創刊320年、「世界最古の新聞」が発行終了 オンライン化の波抗えず

オーストリアの日刊紙「ウィーン新聞」の紙版最終号となった2023年6月30日付け紙面の1面(Matthias Röder/picture alliance via Getty Images)

オーストリアの日刊紙「ウィーン新聞」の紙版最終号となった2023年6月30日付け紙面の1面(Matthias Röder/picture alliance via Getty Images)

創刊から320年を数え「世界最古の新聞」とされるオーストリアの国営日刊紙ヴィーナー・ツァイトゥンク(ウィーン新聞)が6月30日、紙版の発行を終えた。法改正により官報掲載の手数料を得られなくなり、収入が落ち込んだという。最終号の1面では「320年、12人の大統領、10人の皇帝、2つの共和国、1つの新聞」と、4世紀にわたる歴史を振り返った。

ウィーン新聞はハプスブルク帝国時代の1703年8月8日に創刊され、これまでの発行日数は11万6840日におよぶ。現在はオーストリア政府が所有しているが、編集権は独立している。AP通信によると今後はオンライン版に移行し、月に1回は紙版も発行することもめざしている。従業員も63人削減し、うち35人は編集部員だったという。

ドイツ誌シュピーゲルによると、ウィーン新聞は新法によって官報欄からの年間1800万ユーロ(約28億円)ほどの収入を失うことになった。トーマス・ザイフェルト編集長は新法に反対し、日刊紙の発行停止という決断は「ジャーナリズムにとって試練の時」だったと述べている。

ウィーン新聞の行く末にはここ数年、疑問がもたれていた。米ニュースサイトのポリティコによると、オーストリアのセバスティアン・クルツ前首相は2021年、「新聞の運営や資金手当ては国のやる仕事ではない」との考えを示し、ウィーン新聞についてはオンライン版のみにすることを支持していた。

一方、ウィーン新聞の編集部は今年4月、国内に日刊紙が13紙しかないことに言及しつつ、オーストリアでは「独立し、客観的で、事実に基づく質の高いジャーナリズムがかつてないほど必要とされている」と訴え、新法に反対する声明を出していた。

紙版の最終号には、オーストリア出身の米俳優で元政治家のアーノルド・シュワルツェネッガーや、元オーストリア首相のフランツ・フラニツキーとヴォルフガング・シュッセルのインタビューなどが掲載された。

シュピーゲルによると、現在も発行が続く世界最古の日刊紙のタイトルは、ドイツ・ヒルデスハイムの地元紙ヒルデスハイマー・アルゲマイネ・ツァイトゥンクが得ることになった。同紙はウィーン新聞の約2年後の1705年6月24日に創刊された。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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