女性シェフとして、母親として
インドでの女性シェフの活躍についても話を聞いた。「正直なところ、本当に難しいことだと思います」と語るヴァニカ氏。「私は独学でシェフになったのですが、正式な認定を受けていないため、人一倍努力が必要でした。そのため、人と差別化しニッチを開拓することに決めたんです。現在私は女性の多いチームと働いていますが、今後もインド各地の企業や団体と協力し、業界で働く女性の活躍を応援したいと考えています」3歳の息子の母親でもある彼女にとって、仕事と育児の両立は最も難しい部分だともいう。「子供が生まれて最初の2年間は毎日泣いていました。子育てに専念したい気持ちもあったけれど、何か自分の足跡を残したかったんです。すべての決断に葛藤し、自分を責めてばかりいました」。自分に厳しくしすぎると、辛くなる一方だ。「限界に達したある日、あるがままの自分をうけいれることにしました。いいときもあれば悪い時もある。すべてを完璧にやることはできないことも受け入れる必要があるし、正しい答えもバランスも存在しない。それをもっと早く知っていたかったです」。
「レストランが発展するには、常に学び続け、ユニークなものを造り出すことが重要」という信念のもと、進み続けるヴァニカ氏。この夏もブータンやロンドンでコラボレーションを行い、現地の食材への理解を深めながら、noonの知見を広めていきたいという。一方、cenciチームも、3月にはシンガポール「Basque Kitchen」と現地でポップアップイベントを行うなど、この数年間、国内外のトップシェフと精力的にコラボを行い、進化を続けている。9月には、cenciチームがムンバイへ出向き、今度はインドを舞台にコラボレーションを行う予定だ。
「まさに一通のインスタDMから始まったこのイベントですが、実際、本当に知らない食材やソース、調理法があって、とても学びになりました。旬の日本の食材に色んな国の食べ方を取り込むのは、日頃からのcenciの思考スタイルで、今回はまさにそれをヴァニカの料理との組み合わせで実践したので、とても心地よい着地になったと思います。9月ムンバイでどんなものに出会えるか、楽しみでなりません!」
水上彩(みずかみ・あや)◎ワイン愛が高じて通信業界からワイン業界に転身。『日本ワイン紀行』ライターとして日本全国のワイナリーを取材するなど、ワイン専門誌や諸メディア等へ執筆。WOSA Japan(南アフリカワイン協会)のメディアマーケティング担当として、南アフリカワインのPRにも力を注ぐ。J.S.A認定ワインエキスパート。ワインの国際資格WSET最上位のLevel 4 Diploma取得。